2013年(平成25年)10月10日号

No.588

銀座一丁目新聞

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花ある風景(504)

 

湘南 次郎

 

JR北海道の鉄道員(ぽっぽや)よ、誇りを持て
 


 本誌10/1号の茶説に牧氏の厳しいご意見が載った。また、日本の縮図と視る目は八十路(やそじ)を振り返り現状は悲しいかな、あたらずとも遠からずだ。毎年のようにJRフルムーンパスを利用して北海道まで旅行をしている小生夫婦にはたび重なる事件、事故には、たいへんなショック、迷惑である。実は、ほとんど問題の線を乗車し、懐かしい思い出をもって観光していたのだ。

 先日、渡辺謙の映画「許されざる者」を見、改めてあの北海道の雪の原野にレールを敷いた人たち、それを安全運行する鉄道マンの苦労を思いやった。かつて北海道は国鉄、教員組合の強いところとして有名だった。しかし、彼らは妻の死に目にも会えず、「鉄道員(ぽっぽや)」としてのプライドを持って死に物狂いで業務に専念したのではなかったのか?同映画の僻地にある古い駅の撮影現場も見たが、雪が積もったら想像を絶するに違いない。しかし、君たちの先輩はそれを歯を食いしばってやってきたのを忘れてはいけない。

 小生夫婦は今回、幸か不幸か本年にかぎり、紅葉見物で東北、若狭、京都、四国のフルムーンを予定、特急券など申し込んだ。(本年春は美瑛、富良野、十勝岳)(昨年秋は稚内――→鹿児島中央の日本縦断)しかし、来春はぜひ、新潟からフェリーで小樽へ、そして、北海道周遊を予定しているのだが。とにかく、北海道は、日本語が通じ、飲料水は良く、景色は雄大、食い物は最高、国内外を問わず旅行には最適だ。その愛すべき北海道の足となる鉄道が、このていたらくでは。世界に冠たる時刻表もあてにならず、予定もなにも組めないとんだ事態になってしまった。

 かつて日本陸軍に、「実行報告」という言葉があった。上官の命令を実行したら必ず結果を報告する。上官は、それを確認する。もし、事故や他から注意を受ければ直ちに受け持ちの上官に報告し、指示を仰ぐ。JRはこの報告がおざなりだったようだ。つまり、「言いっぱなし」「やりっぱなし」のうえ、上司には言いにくいとか、悪く言われるのではないかとか、硬骨漢のいない不正義の風潮があったらしい。組合運動華やかなりしころの「労使協調」はどうなったんだ。なにか、今のJR北海道は、労使ともにおかしい。なにかが欠けている。幹部の更迭などで済まされる問題ではない。

 あの広大な大地、鹿はともかく、300sもある人食いのヒグマが出て来るところ、民営化したときの経営安定化基金の運用益500億円の黒字はとっくにすっ飛んで、格安航空機、高速バスに押され赤字続き、車両の老朽化、毎年の風雪害、保線の苦労も内地とは大違いで、そのうえ人手不足で本社のチェック、現場教育も欠けているのだろう。どうしていいか、JR職員の心中、察するに余りある。国土交通大臣が檀上でハッパをかけていたがなにか空虚であった。現地は苦慮しているのもわからないではない。大臣自ら真冬の保線の実情も視察され、それで処置されたらいかがか。

 特急列車に乗ってみて、上は豪華でもエンジンは老朽化したのを使っていたのか、レールの幅もおかしかったのかと始めて知る。こうなると、アラが次から次へ出てくる。この際は乗客、沿線の安全第一を優先し、JR北海道はなんとか国が立て直さなければならない時機に来ているのではないだろうか。

 しかし、それは、それ。それにも増して職員諸君の先輩が矜持した鉄道マンの誇りをよみがえらせて、奮起を望むことが最も切である。