2012年(平成24年)8月20日号

No.548

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花ある風景(503)

 

市ヶ谷 一郎

 

ローマは一日にしてならず
 


 今年の夏は気温ばかりでなく、安倍政権になって世相も暑い。中国の傍若無人のふるまい、北朝鮮や韓国の挑発的行動がますますひどくなっている現状で、国家国民のため、護憲か改憲か大いに議論していただいているのは結構なことと思うが、時に、自衛隊運用論議の前提がおかしい方々がいる。

 我が国は明治維新より、多くの戦争、事変を経て敗戦があった。以後自衛隊の活動と軍事的進歩は目を見張るものがあるが、これは一朝一夕に進歩したのではない。先輩諸兄の犠牲の上に立った血と汗の結晶であるのだ。また、日夜を分たぬ訓練のたまものでもある。私や当紙主幹の牧氏の陸軍士官学校の同期生で、終始自衛隊の戦車にかかわっていたM元陸将に聞くと、現在世界に誇る最新鋭の10(ひとまる)式戦車は制定2010年運用までに、発想から研究を重ね20年の歳月を要していると言う。読者諸氏も小学校から社会に出て活躍されるまで何年の歳月がかかったかお判りか?

 話かわって、リニアモーターカーの開通は名古屋までが、平成39年(2027)、つまりあと14年後のことで、大阪までは、2045年だそうだ。昭和37(1962)年より研究が開始されたのだそうで、もう50年の歳月がたつ。余談だが、珍しもの好きな筆者は昭和33年(1958)開通の東海道本線の特急こだまや、昭和39(1964)年開通時の新幹線に乗ったものだ。リニヤ開通は筆者馬齢100才を越える。ちょっと間に合わぬ。孫に相続だ。しかし、乗客が騒ぐのは一時、あとは、開通までの苦労も忘れ、あたりまえにすぐ動いたように、慣れて平気で乗っていることになる。

 評論家の中には、軍隊がすぐ使いものになるような前提で、将棋の駒を動かすような話をする人がいる。命がけの仕事をするのに「即戦力」など簡単なものではない。雁首をそろえた数合わせではこの仕事はつとまらない。作るからには、あらゆる事象を想定し、気の遠くなるような歳月をかけ、隊員の訓練、装備の研究、開発を行い、精強無比なものとし、それを効率良く運用しなければならない。他国に挑発とか、右傾化、軍国主義の復活だとか国賊や馬鹿者どもに罵倒されても、そんなことに遠慮して足踏みしていれば、世界の軍事的進運に遅れ、将来に禍根を残すのは明白だ。将来を洞察し、長い年月たゆまぬ努力を必要とする。論外だが、国土防衛に.学者や政治家で、おだてられ平和、平和と自衛隊の足を引っ張るのがいるが、どうも足踏みをさせているのは周辺諸国の黒い手、すなわちウヨウヨ日本国内に潜入している外国のスパイが程度の悪い国民をひそかに躍らしているのではないだろうか?

 とにかく、国防の任を主とする自衛隊の即応能力は直ちに身に付くものではないということを頭に入れておいて議論してもらいたい。まさに、「ローマは一日にしてならず」なのだ。そしてわが国の周辺諸国のような自称、立派な軍隊、(国防軍という言葉もこじつけ?)を持つ普通の国にし、世界に伍すべきだ。