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月下美人に思う
牧念人 悠々
我が家の月下美人が4つも白い花を咲かせた(9月18日)。6月19日に続いて2度目の開花である。手元にある『自然大博物館』(小学館)には7月から11月の間に2,3回開花するとある。すると11月までもう一度開花するかも知れない。楽しみだ。この夏、部屋から庭先に出した。猛暑続きであったのでよく水を与えた。そのせいかもしれない。白い花を見て救われる思いがした。今年7月までは「人生の余白」(陸士59期本科14中隊1区隊史)をまとめるのに時間をつぶした。本を出版し、9月13日陸士の最後の全国大会も終わりほっとしているところであった。花に慰められるとは年を取ったものだとつくづく思う。遺書のつもりで出した本だが入院している同期生の息子さんから「早速病院に行き、一節を読んで聞かせました。なんだか目が輝いているように思えました。また読んで聞かせてやろうと思いました」との嬉しい手紙をいただいた。
人間の趣向は「動物」「植物」「鉱物」へと変化していくという。生涯ジャーナリストを目指す私は人間の動きを判断するのがなにより肝要と思い、当分は「動物」に興味が集中するであろうと考えていた。花に心がいたく動くとはそろそろ人並みに“老境”に入ったということであろうか。
そう思ってももう少し現実と向き合わねばならない。どうも気になっているのがシリア情勢である。8月30日「銀座展望台」で次のように書いた。「シリアは近いうちに限定的空爆を受けるであろう。その間に毒ガスを地下へ隠くされる。攻撃までに時間がかかりすぎる。これでは毒ガスの使い放題である。
民主主義の世の中、証拠、手続き、根拠、合法性が求められる。泥棒をみて縄を結うごときものである。だが『シリアが毒ガスを使った』という汚名は残る。国際社会で孤立するだけといいたいが支援する国がいる。ロシアと中国である。この事実も覚えておこう」
その後、ロシアの提案を米国が受け入れてシリアへの空爆をやめてアサド政権が化学兵器を破棄することになった。化学兵器を使ったのはシリア政権か、反政府側かでもめたが国連調査団の調査の結果「サリンは高品質で反体制派が簡単に作れるものでない。サリンを搭載したロケット弾もアサド政権のものだ』と分かった。なおアサド政権は1000トン以上の化学兵器を保有しているという。簡単に破棄すのであろうか、疑問だ。真実と事態の推移を予測するのは難しい。これを適格に速やかに報道するのがジャーナリストである。私は見通しを誤った。まだまだ老いるわけにはいかない。 |
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