私たち「山の花」グループの師、故坂倉登紀子さんは「山があるからではなく、花があるから山へ登るのです」と教えられたが、2月雪の森吉山を案内してくれた「ペンション・クライマー」のS氏は、秋田駒の花を知り尽くした人。「一番の花の見頃は何時」「7月第一週だな」「ちょうどいいは。大人の休日お得切符が使える。7人で予約したい。」「山の花の仲間を誘い秋田駒を登りたいから、おじさん案内お願いね。梅雨時でお天気が心配だけど。」「7月上旬は秋田のほうはあまり降らね。」秋田訛りがすごい。
7月5日(金)真っ赤な車体のスーパーこまちの座席指定で、山の仲間4人と久しぶりの元気な顔合わせにほっとした。もう2人はスーパーが取れず1本前のこまちで田沢湖駅12時合流。P・クライマーのS氏が迎えに来て、車に乗り込んだ。ところが雨がどしゃ降りになり、「山は駄目だな、じゃ大場谷地湿原が花盛りだから、そこ案内するべ。」女性6人の仲間たちはおしゃべりで賑やかだ。40分ほど車を走らせ、白い花の群落が見え「大場谷地湿原」駐車場到着。傘を差して木道を歩き出した。純白の咲き始めのコバイケイソウの群落に皆の歓声が上がった。次に赤橙のレンゲツツジの群落、白と赤橙が縞模様のように広がり、雨に濡れて生き生きしている。木道を20分ほどS氏の後を歩き、山道へ入った。沢筋に道は続き、大きなブナの林だ。手が回らないような大きなブナの大木の根にマイヅルソウの群落が小さな白い花をつけ咲き乱れていた。「熊に遭うがも。戻るべ。」急いで木道に戻り、駐車場へ戻る途中の見晴し台では黄色のニッコウキスゲの群落に目を奪われた。戻る途中、秋に紫の実を付ける真っ白い房状の花の樹を質問したら「サワフタギだ。」S氏は本当に良く植物を勉強していた。「平日だし玉川温泉に行くが。がん治療の温泉だ。冬に岩盤浴をしていた人が雪崩で死んだ。」火山のマグマが噴き出ている処を一周して、皆で日帰り入浴に入って驚いた。酸性50%・20%と浴槽が別れ、入ると肌はヒリヒリ刺激が強く長く入れない。薄めた湯で温まり、源泉飲料は酸っぱくて飲めなく、始めての経験だった。P・クライマーヘ16時到着。
7月6日(土) 5時起きし、朝食と、弁当まで準備して貰い、S氏に案内をお願いしていたが、「今日は天気予報が悪すぎ、どしゃぶりが一日続くみでだ。山は駄目だ。サクランボ狩りはどうだ?」皆に相談してサクランボ狩りへ。ひたすら横手を目指し、2時間余り走り、S氏知り合いのサクランボ農園到着。
雨にサクランボが当たると商品価値が無くなるので、大きなビニールハウスの中、見事に赤い実をたくさん付けていた。思う存分食べながらの収穫作業。甘い、酸っぱいと言いながら賑やかにお土産まで収穫した。「横手城へ寄りたい。」公園の中にあり、外見新しいが小さく、中の博物館も物足りなかった。外に出て東屋を見つけ皆でお弁当を食べた。クライマーママのおにぎりがとても美味しかった。帰りは大曲から角館へ寄り、コーヒータイム。S氏ご夫妻出身の夕刻の情緒溢れる町角館は、素晴らしい。コーヒー館の若い主が地元のお祭りを宣伝され、皆もその熱心さに心を動かされたようだ。
7月7日(日) 曇り、でもS氏は「用事があり、案内出来ねな。」皆に地図を広げて「阿弥陀池避難小屋に寄り、そこでゆっくりするように。それからコマクサの群落は焼砂、残雪の所にシラネアオイが咲いでるがら、気を付けでな。」マイカー規制で、アルパこまくさでバスに乗り25分、8合目(1300m)到着。
準備を整え、ストレッチをして主目的の高山植物を求め出発。始めにハクサンチドリがあちこちに咲いていた。ビスターリ、ビスターリとミヤマハンショーヅルの蕾を見つけ、タカネアオヤギソウを見つけ、お花が次々あり、片倉展望台(1440m)に到着。周りの景色はといえばガスの中で何も見えない。ここから浄土平は花の道、中でもエゾツツジのピンクは花も葉もヒゲに覆われ露に濡れ美しい。ツツジ類で一番美しいエゾツツジの群落に感激。
カメラを構えた人が数人、広がるコバイケイソウの群落を狙っていたが、ガスが立ち込め周囲の景色を遮り、残念がっていた。木道に出るとチングルマのヒゲと白花の群落は凄い。阿弥陀池に到着して、小屋を見つけ安心したが、ガスの中に消えてしまった。木道の道を間違えて、直ぐ着くはずの小屋が無く、標識が横岳になっていた。何度か戻って地図を広げて皆で相談したが、横岳への道を進んだら横岳(1583m)へ到着。お茶タイムをしながら周囲の景色を楽しもうとするが何も見えず。記念撮影をして、コマクサを目指し、大焼砂へ、景色も見えず追い風が酷く、コマクサをゆっくり鑑賞する状況ではなく、シャクナゲコースの下山コースに入った。シャクナゲ咲く道を下山し、ロープが張られた残雪の道に出てシラネアオイの群落をみつけた。ミネザクラも咲いていた。
高山植物を探す一周コースで3時間11時に8合目到着。皆の顔が余裕で輝いていた。しかし素晴らしい景色を見せてもらえず残念だった。S氏ご夫妻に深く感謝して、来年は、今度こそ乳頭山までのロングコースの花の旅を計画し、素晴らしい秋田駒ヶ岳の景色と花々案内をしていただこう。