2012年(平成24年)10月1日号

No.552

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花ある風景(469)

 

並木 徹

 

映画「最強のふたり」に感あり
 

 フランス映画「最強のふたり」を見る(9月19日・東京新宿武蔵野館)。富豪と貧乏、剛と柔、光と影、クラシックとホップス、新と旧、急と緩、・・・映画は“対照の妙”を観客の前に見せる。そのギャップの面白さに観客は笑う。底に流れるものは『車いすの人』を同情せずに普通の人と同じように扱うと言う人間性である。この映画は実話に基づく。モデルは大手シャンパン会社の重役で貴族階級末裔のフイリップと彼の世話係を10年間勤めたアルジェリア人青年アブデルである。フイリップは自伝のなかで、アルデルのことを「彼は手に負えず、見栄っ張りで、傲慢で、粗野で、無自覚で、人間味がある。彼がいなければ私は崩壊して死んでいたであろう。私がダメになった時に笑わせて呉れた」と書いている。映画は事故で首から下が麻痺した大富豪フイリップと不採用でも証明書3枚があれば失業手当がもらえると面接に来たスラム街出身の黒人青年ドリスの出会いから始まる。採用されたドリスは個室と専用の浴室を与えられる。車いすのフイリップに同情せずずけずけものを言う。二人はことごとくに衝突する。それがフイリップには新鮮に映る。これまでの介護人は傲慢で気難しいフイリップに耐えかねて1週間で逃げ出している。

 やがて二人の間に友情が生まれる。ドリスは秘書を口説き、フリップの養子もしつけが悪いといってしかる。あくまでも本音で生きる。映画の冒頭はパットカーとカ―チェスを演じるシーンである。車を暴走させた理由を警官から聞かれてドリスはフイリップが発作を起こして今病院に運ぶところだとごまかす。フイリップも泡を吹いて仮病の真似をする。普通の介護人はこんなことは出来ない。何事も無難に過ごしてきたフイリップにはこのような冒険は生きる喜びを感じる。これまでフイリップの誕生日の音楽はクラシック一辺倒であった。ドリスはホップスを加えみんなと楽しく踊り、雰囲気を盛りたてる。平気で下ネタを口にしてフイリップを苦笑させる。宝石泥棒の前科があることがわかっても「彼の過去や素性など今の私にはどうでもいいことだ」と言い切るまでになる。それでもドリスの弟のことで二人は別れることになる。再び孤独に陥ったフイリップにドリスはフイリップが文通だけで付き合っている女性と会わせ、結婚までこぎつける。ドリスは運転手の職を得る。ドリスが心にとどめていたのはフイリップの「一番つらい障害は最愛の妻がいないことだ」と言う言葉であった。文通の女性と結婚させたドリスは優しい心の持ち主であった。この映画が昨年度フランスで映画興行収入の最高記録を作った理由がここにあるといってよいだろう。