2012年(平成24年)9月20日号

No.551

銀座一丁目新聞

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茶説

「日本歴史」の教育がおかしい

  市ヶ谷 一郎

 ある団塊の世代(約60〜65才)といわれる高校の英語の先生と、鎌倉時代の歴史の話をしたところ、チンプンカンプンで噛み合わない。よく聞くと「ボクは高校で世界史を選択し、日本史は授業を受けずよくわからない」とのこと。筆者は86才、戦前の歴史教育を受けたものだから、その言葉には目をむいた。えらいことが日本では行われていたのだ。そういえば、鎌倉も小町通りはソフトクリームを食べながら歩く若者で混雑するが、国宝館は静かだ。教育者は、政治家は、この始末どうしてくれるのだ。教育は輪廻(りんね)する。教え子が大きくなって先生に、そしてまたその教え子が。ツケは大きいぞ。そういえば、筆者の孫が成人したので、娘が歴史漫画の全書十数冊が要らなくなったので、オジイチャンどうぞと持って来た訳が判った。さすが、彼女はわが子の日本史教育の不足をユニークにも漫画本で補っていたのだ。

 実は、戦後の占領政策もさることながら、平成6年度からも文科省は学習指導要領に世界史(西洋史のようなもの)を必修化、日本史と地理はどちらか選択とした。従って、日本史を学ばないで卒業する生徒もあったという。この裏には×××の黒い手があったことは否めない。これにはさすがおかしいと気が付いたのであろう。平成22年都の教育委員会は、日本人としての自覚向上のため、高校生に日本史を継続して学ばせることが重要である、という基本的な考え方に基づいて、都立高校の日本史は必修に踏み切った。これは都立高校だけのこと、私立はまだまだだ。年配の読者諸君はこの現実をご承知か?
筆者に言わせれば、何で今頃寝言を言っているのか理解に苦しむ。急に言われても学生運動優等生が多く、適切な教員は大不足だ。輪廻の弊害がここにも出て来る。よくもやってくれた、戦後から今まで引っぱって来た×××の執念に、逆に敵ながらあっぱれと言わざるを得ない。

 今、我々の受けた「国史」は、「日本史」という言葉に代わられ、死語になった。大河ドラマ「平 清盛」で、我々には懐かしい多くの有名な歴史上の人物が毎回多数登場する。歴史を知らなければ、もっと肩書、係累(親兄弟親戚)、知人関係の名札でも着けて貰わなければ判るまい。視聴率が最低なのも当然だ。また、驚くなかれ、こんな笑い話もある。畏れ多いことだが「天照大神」を(テンテルダイジン)と読む、「英霊」をイギリスの幽霊、「B29」は鉛筆の種類と言った若者が本当にいたそうだ。教育の毒の恐ろしさだ。

 そうだ!ご高齢の諸君、若い人たちに機会があったら、戦争体験ばかりでなく、蘊蓄を傾けて、美しい国土、日本の歴史の話をしてやって貰いたい。必ずや諸君の話は、新鮮であり、キラキラと目を輝かして聴くだろう。彼らは、まともに二千年の誇るべき母国の歴史教育を受けられず、知らないのだから。