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女性ジャーナリストの死に思う
牧念人 悠々
内戦が続き、多くの難民が国外へ脱出するシリアでフリーのジャーナリスト・山本美香さん(45)が取材中、政府軍側に撃たれ死んだ(8月20日・アレッポ)。このニューを聞いて「なんでフリーのジャーナリストが・・・」と思った。大手の新聞社の記者やカメラマンは何処にいたのか。危険な仕事はすべてフリーのジャーナリストに任せるということか。ここだけの話だが、そういえばイラク戦争の際、大手の新聞社の記者は首都バクダットを逃げ出して隣国にいて残してきた助手から話を聞いて記事を送ったという話を聞いた。
ジャーナリストにとって「現場は宝の山」である。それを放棄してジャーナリストと言えるのか。もちろん脱出は会社の指示であろう。シリア人権監視団(英国)の情報では昨年3月の反政府デモ以来死者は2万4495人に上りうち市民が1万7281人を占めるという(毎日新聞)。国連はこのような内戦には全く無力である。マスコミにはこの内戦の実体を伝える義務がある。
第二次大戦ではベルリン陥落の際、朝日新聞の特派員は会社の帰国命令を聞かずに現地のとどまり特ダネを送り続けた。ベトナム戦争では会社の帰国の指示を聞かず最後までサイゴンにとどまり、報道をした記者たちが何人かいた。それがいつの間にか「死を恐れる記者」たちになってしまった。
イラク戦争報道でボーン・上田賞を受賞した山本美香さんは「戦争の悲惨な写真を撮り続けることによって戦争がなくなればよいと思っている」と語っていた。自分のしっかりした目標を持ってば死ぬ覚悟はできる。戦場で「現場主義」を貫くのは時には死を招く。新聞報道の仕事は常に死とかかわりを持つ。山本美香さんが反体制派の「自由シリア」に同行取材とあれば政府系軍隊に狙われる。自分たちに不都合な写真を世界に報道されたくないからだ。戦争に関する国際条約では記者を文民として保護されるとあるではないかと言ってみても戦場では問答無用である。
山本美香さんの遺志を継ぐには記者たちが危険な現場へ率先して出かけ取材することだ。ある人が言った。『勇気、卑怯の差は小さいが責任感の差は大きい』。つまり危険な地域の取材に出かけるのは勇卑の差ではなくて仕事に対する責任感の問題である。とすればやる気のある記者たちが少なくなったといえる。フリーのジャーナリスト山本美香さんの死の教訓はここにあるといってよい。
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