安全地帯(357)
−市ヶ谷 一郎−
再び『作戦要務令』、 戦争を知らない恐ろしさ
北朝鮮のミサイル実験が失敗した。おまけに恥ずかしいが、日本政府の国民への発射広報も失敗であった。安心したのは、日本本土にミサイルを向けていて日本の不備を知ったどこやらの国ではなかったか?
政府の発表として、地球は丸いからイージス艦や地対空ミサイルPAC3のレーダーでは届かない。しかも、捕捉する前に北のミサイルは落下してしまったため、確認に時間がかかったとか変な言い訳を風聞する。発射するのは予告で判っている。私のような門外漢でも地球が丸いのは判っているし、偵察衛星も揚げているだろうし、米軍からも通報が必ず入ったはずだ。また、実戦部隊は何回もあらゆる事態を想定して予行演習して来たのではないか。政府の対応は全くそれなのにおかしいし、謝って済む問題ではない。ミサイルの着弾予定時間を考えれば余りにも国民への通報が遅すぎる。実戦経験のない悲しさ、平和憲法と称するものに育ってきた最高司令官の総理大臣をはじめ防衛大臣の体たらくにはなんともいやはや。米軍よりの第一報を受け、即座に政府に報告した昼夜を分かたず警戒していた自衛隊制服組は、さぞ切歯扼腕(せっしやくわん)しただろう。確認、確認と右往左往した政府責任者、声高に言っていたシビリアンコントロールの責任は?だれも責任を取ったものはいない。猛省を促してやまぬ。なお、細かい経過、時刻等は各種の報道にお任せする。
ここでいよいよ尊い先輩の血と汗の結晶『作戦要務令』(昭和13−1938)年制定に準拠)である。その綱領第十に「…前略…為サザルト遅疑(ちぎ…疑い迷ってグズグズする)スルトハ指揮官ノ最モ戒ムベキ所トス 是此ノ軍隊(国家に置き直して)ヲ危殆(きたい…危険なこと)ニ陥(おちい)ラシムルコト其ノ方法ヲ誤ルヨリモ更ニ甚ダシキモノアレバナリ」と。
無理もないが、戦争体験なく、ペーパーテストで平和の世に育って来て、責任ある要職を受けている方々、どうも口や小手先のことは優等生でも、基本になる指揮官としての資質の教育を受けて来なかったのではなかろうか?緊急事態にどう対処するか?国運を左右し、国家、国民を危殆におとしめぬよう、本当に腹を切ったのはいないが常套文句(じょうとうもんく)の、「死を賭して」とか「命がけで」とかでもう一度、基本を勉強していただきたい。なにとぞ、税金を払って、頼りにならぬとも頼らざるを得ぬ国民の心情をご推測くださるようお願い申し上げる。
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