1998年(平成10年)12月1日(旬刊)

No.59

銀座一丁目新聞

 

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茶説

向井さんへの返歌「ダルマはどんなに驚くだろう」

牧念人 悠々

 向井千秋さんがディスカバリーの船内から、小淵恵三首相らと交信した際に呼びかけた短歌「宙かえり 何度もできる 無重力」の下の句の応募が殺到した。予想外の国民の反響は喜ばしい限りである。

 国民に返歌を求めた向井さんのアイデァはすばらしい。それにしても、この時、即座に下の句を打ちかえさなかった小淵さんには失望した。たとえば「あなたの勇気 我を励ます」とか、字余りでも字足らずでもよいから、思いつくままに打ちかえせばよかったと思う。そうすれば、小淵さんの人気は高まったであろう。

 昔から、日本には返歌を求める風習がある。平安朝のころ、源氏の棟梁、八幡太郎義家が、奥州征伐のさい、安倍貞任を衣川の柵に追いつめたとき、矢を引きしぼって「衣のたてはほころびにけり」と呼びかけると、追いつめられた貞任が「年を経し糸の乱れの苦しさに」と歌をかえしたので、その心根を「あわれ」と思って矢をはずしたという話は有名である。

 この場合、下の句をよんだのに対して相手は上の句で答えたのである。武士といえども美を解し、風流の心をわきまえていた。

 向井さんの上の句に対してみなさまはどう答えますか。

 

 「達磨はどんなに 驚くだろう」

 「見果てぬ夢に 手をさしのべて」   

              (大竹洋子)

 「遊び心に 生きづく宇宙」

 「はしゃぐ千秋に 我を重ねる」

              (牧内節男)

 

 「手を取り合えば 不可能はなし」

              (クリントン大統領)

 「降りゆく星が 金ならいいのに」

              (中田智子)

  以上二句は1125日スポニチより

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