2011年(平成23年)12月1日号

No.522

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茶説

3・11以後の時代の流れを読む

 

 牧念人 悠々

 3・11の東日本大震災以後、時代の流れは大きく変わった。まず政治。大阪のダブル選挙である。『銀座展望台』(11月14日)に次のように書いた。「大阪市長選挙始まる。投票は27日。大阪都構想を掲げ二重投資を避け効率ある市政を目指す橋下徹候補(42)とこの構想を時代に逆行する府県主義だとする平松邦夫候補・現職(62)の対決。面白いのは平松候補に自民・民主の両県連と共産党が支援していることだ。この3党は多少の改革を望んでも現状維持派である。その意味では保守的な考えの持ち主のようである。

 現代は全ての組織が硬直化している。何らかの改革をしなければ時代に対応できなくなっている。ハードランディングかソフトランディングか市民の軍配はどちらにあげられるか興味がつきない」

 市長選も府知事選も大差がついて橋下徹さんと松井一郎さんがそれぞれ当選した。有権者は時代が変わろうとしているのを漠然と感じている。今の世の中の“閉塞感””不安””危惧”を払しょくしたいと願っている。これまでの既成政党の在り方では有権者を納得できなくなっている。大きな戦略・構想を持たなくては有権者に受け入れられない。今回の大阪のダブル選挙の結果は自治体の長の選挙とはいえ一つのエポックであるのは間違いない。

 さらに、時代の底流れにあった珠玉のような魂がきらりと姿を見せた。大震災での三陸大槌町の消防団員の話である。団長は津波を知らせる半鐘を鳴らし、帰らぬ人となった。人間はただ生きるものでなく、それを越えるものを内に抱いている。人間は時には公のために命を捨てる。大震災で自衛消防団員の殉職者は197人を数える。17人の犠牲者を出した宮古市では身の危険を感じたら避難誘導を放棄すべきであるとして消防団長は「逃げる勇気」を説く。自衛消防団は別に職業を持ちながら災害の場会、出動して地域住民の救助・避難・誘導に当たるのだからやむを得ない面がある。だが、人間には惻隠の心がある。緊急の際、逃げ遅れた者がいるときに見捨てていくことが出来るであろうか。強制できないにしても人間の魂は、己を捨てても人を助けよと命じる。これを今回かいま見ることが出来た。日本人の「滅私殉公」の精神が未だに衰えていない証拠である。

 今回の大震災で「最後の砦」「自己完結の組織」として大車輪の活躍をして存在感を示したのが自衛隊であった。東北地方各地の駐屯地や基地が、ほかの行政機関に対する支援拠点の役割を果たした。政治家、企業のトップ、地方自治体の長などは戦後66年間の平和になれ、『常に最悪の事態に備える』心構えが欠如していた。大震災は地震より津波の被害が大きく、その被害も広域で甚大であった。地方自治体の機能の喪失という事態も加わりさらに原発事故も重なった。よけに組織のあり方とその能力を鋭く問うた。時代の流れは、確固たる信念、判断力、対応力と先見性のない組織、人間を容赦なく切り捨てて行く。