花ある風景(435)
並木 徹
あなたは100歳まで生きられるか
朝日新聞に『100歳まで生きたいと思う?』と読者に質問したアンケート調査の結果が掲載された(10月15日別冊付録)。日野原重明さんが100歳を迎えたのにちなんでの企画である。その結果、意外にも100歳まで生きたいと思う人が少ないのである。記事の前文には『長く生きてもいいことばかりじゃないとの声にうなずきつつ、少しさびしくなってきました』とある。現代人の気持ちが良く出ているのかもしれない。私は一応120歳まで生きるのを目標としているのでこの記事には関心を抱いた。120歳は『天寿』である。生涯ジャーナリストを目指す私にはやるべきことがたくさんある。目標に向かって努力するのは人間として当たり前である。回答した4144人のうち『やるべきことがたくさんある』と答えた人が571人もいる。心強い。現在、私は86歳である。ともかく前向きに生きる人でなければ長生きはできない。『病気になってまで生きたくない』(1435人)『親族に迷惑をかけたくない』(1133人)『100歳に意味を感じない』(1112人)。人は自由である。その人の心の持ちようが寿命を決めると考える。『100歳まで健康を維持する自信があるか』と問われれば私は『100歳は通過点に過ぎない』と答える。アンケートの答えは『自信がある』が30%、『自信がない』が70%であった。
次のアンケートの答えには注目してもよい。『100歳まで生きるのに必要だと思うものは?』、健康(3386人)、前向きさ(1213人)、財産(1871人)、終の棲家(739)、家族(1261人)、友人(286人)、好奇心(1234人)、仕事(199人)、趣味(1217人)、恋愛(138人)。
私があげるとすれば、前向きさ、友人、これは大切である。友人と会って知的刺激を受ければいうことはない。愚痴る友人は避けた方が良い。この原稿を書くきっかけを作ってくれたのは好奇心旺盛な知人の女性であった。このほか大事なのは食事である。中学時代の先輩が食材に薬効ありと教えてくれた。コンビでものを買うよりも自宅で作ったものを食べる方がベターである。また極力薬は飲まないようにする。
薬には毒がある。だから私は医者嫌いである。さらに模範とする先輩を持つこともよい。今年深く感じ入った出来事があった。陸軍士官学校の区隊長、西宮正泰さんが今年の春『万葉集探訪』という本を出版された。専門家が見ても本の内容は学術的にもすぐれ、わかりやすく読みやすい本であった。区隊長の年齢は91歳である。その本が最近さらに500部増刷された。現在は本の売れない時代である。恋愛小説ならいざ知らず、本を増刷するというのは快挙である。長がく生きるというのはその人の心の持ちようである。長寿がその人についてくるに過ぎない。
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