2011年(平成23年)8月20日号

No.513

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茶説

日本経済は崩壊するか

 

牧念人 悠々

 毎年8月、長野県戸隠でトウモロコシを30本ほど買う。1本100円である。昨年も同じ値段であった。これがゆでて食べるとおいしい。すでに独立した息子や孫達に送るととても喜ばれ感謝される。そのトウモロコシに異変が起こりそうなのである。

 朝倉慶著「2012年日本経済は大崩壊する」幻冬舎・2011年7月10日刊)にこんな記述がある。アメリカはトウモロコシの圧倒的な生産地で輸出の大半を占めている。世界のトウモロコシの生産量約8億トンのおよそ4割、輸出に至っては農産物輸出総量9000トンのうち6割を占めている。アメリカは食料こそ最大の戦略物資という考えからエタノールの原料となるトウモロコシを生産する農家を保護し、世界のトウモロコシ市場、食料市場を制覇していこうと目論んでいる。トウモロコシがエタノールに転換されると、トウモロコシの供給が逼迫して値段が上がる恐れがある。トウモロコシに限らず世界的に食料危機が叫ばれており、やがて日本にもその影響が出てくるのは間違いない。日本のトウモロコシの生産量は約1600万トン。やがて戸隠のバードライン沿いにあるあの野菜市場にも世界の波が押し寄せてくるのであろうか。

 3・11の東日本大震災は日本に16・9兆億円(阪神・淡路大震災の1・8倍)の損害をもたらす。福島第一原発の放射漏れが風評被害を生み、輸出が停滞。政治の混乱から復旧は遅々と進まない。そこへ来て円高・ドル安である。借金まみれの日本財政。国の歳入の半分を国債で賄い、国の債務残高は1千兆円を突破した。やがて先進国はインフレに見舞われるという。日本大崩壊の予兆は確かにある。円相場は76円86銭―87銭、株価は9086円41銭(この原稿を書いている時点)でなかなか1万円台に回復しない。

 朝倉慶のこの本を読んだ同期生・広瀬秀雄君の友人でアメリカに住むデビット・ルウさんは「朝倉さんが予測したことが起こりうるのだ」と実感したとのメールを寄せる(デビットさんがこの本を読了した日アメリカの株価は512ポイントも下落した)。それでも朝倉説にいくつかの疑問を呈した後、オバマ大統領批判をする。「オバマは経済には音痴で、左翼の合言葉、所得再分配しか知りません。彼が大統領である限り経済復興は不可能に近いでしょう。しかし望みはあります。あと15ヶ月弱で総選挙。オバマの支持率はすでに40%すれすれに低下しており、もし選挙が今日行われたら。08年にオバマを指示したフロリダ、オハイオ、ミシガン、コロラドなどの諸州の選挙人票は共和党に回ります。この票なしに彼の再選は不可能です」

 菅直人首相も同じことが言える。支持率は20%を切っており、間もなく退陣する。今総選挙やれば民主党は現有301議席から161議席に大幅減るとの予想も出ている(月刊『文芸春秋』9月特別号)。

 経済は「生き物である」。日本人は危機が迫っているのにただ手をこまねいて見るわけにはいかない。デビットさんも「これまで日本は外圧に対応できる立派な蓄積された経済力、人力などがある」と言っている。この点は朝倉慶も指摘している。「物質至上主義は限界である。自分さへ今良ければいいという気持ちを捨てて共に生きることを考えよ」。実は経済の破滅は人間の心がもたらすことに気がつく。混乱期を生き抜くのは日本人の英知である。さらに言えば、大困難を前に冷静な判断を下せる為政者が存在することであろう。