2011年(平成23年)8月20日号

No.513

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安全地帯(331)

信濃 太郎


友人荒木盛雄さんの「アメリカ旅行記」』


 友人の医師・荒木盛雄さんから「アメリカ旅行記」(5月19日から25日・同行4人)が送られてきた。荒木さんは海外に旅行するたびに時間を克明に記した旅行記(今回はB5版14ページ・写真12枚掲載)を残す。読んで楽しいし啓発されるところが少なくない。とりわけ私は旅先で詠んだ彼の俳句が好きである。今回は2000キロの旅で荒木さんにとって初めて見聞するところばかりであった。「雄大で日本はもちろん世界でも他に見られないような景色を、次々に見ることができ、人生85年の初体験」との感想をもらす。アメリカの旅はサンフランシスコを経てラスベガスから始まる。レンタカーで出発。運転は数学者・元都立大学総長、萩上紘一さん(夫人の寿美子も一緒)。同じく数学者で千葉大学名誉教授高木亮一さんも同行。まず「フーバーダム」をみる。

 「岩山を削りたるダム雲の峰」
 「紺碧のダムの水面や雲の峰」
 「十余年もて溜まりたるダム風光る」

 フーバーダムは1931年(昭和6年)に着工1936年(昭和11年)に竣工した。ダムの形式は重力式アーチダム、高さ221m、長さ379mで、ダム湖はレイクミードと呼ばれ、貯水量は約400億トン。日本には約2500基のダムがあるが、その貯水量はの合計は約250億トン。日本の最大の湖に琵琶湖の貯水量でも280億トンであるからその規模が知られる。なおダム直下にバイバス道路として日本の大林組がコロラドリバー橋を建設していると解説する。

 旅の第2日はグランドキャニオンに入る。標高2100m。
 「憶年の地球の皺や風光る」
 「憶年の地層露わにかたつむり」
 「キャニオンに日の沈みたり星涼し」

 「壮大、雄大等と言う言葉では表現できない想像を絶する空間と、数億年と言う途方もない歳月が造り上げた大自然の造形美、巨大なキャンパスに描かれた芸術と言われる(1979年世界遺産に登録される)。峡谷は500万年前にほぼその全容を表し、現在診られる様な峡谷になったのは約200万年で、今も浸食が続いている」

 旅は第3日目。「モニメントバレー」に向かう。
 「ナバホ族の聖地の残丘風光る」
 「精霊の宿る残丘夏の闇」

 アメリカの西南部のユタ州からアリゾナ州北部にかけて広がる地域一帯の名称で、グランドキャニオン国立公園内にある。東北6県の広さがある。「メサ」といわれるテーブル形の台地や、さらに進んだビュート(残丘)と言われる岩山が点在し、あたかも記念碑(モニュメント)が並んでいるような景菅からこの名前がついたと言う。古くからナバホ族の居住地域で、居留地となった現在、その一部はナバホ族の管轄のもと一般に開放する形で公開されており、ナバホ族の聖地になっている。合衆国公認の「国」でナバホ独自の法律、国旗、大学、警察、裁判所まであるという。

 5日目の旅の目玉は岩の芸術の宝庫と言われるザイオン国立公園。公園入り口の標高は1778m。面積593平方q。この公園の特徴は、長さ24q、深さ8百mのザイオン渓谷で、バージン川により赤く日に焼けたナバホ・サンドストーン(砂岩)が浸食されたものである。ザイオンの岩の色は、含有する鉱物の量で決まる。特に鉄分の酸化によって、黒、赤、黄、茶、ときには緑色も生じるという。

 「青葉風百丈越ゆる岩襖」
 「巨岩群にも柔らかに青葉風」

 かいつまんで荒木さんの旅行記を紹介した訳だが大自然の造形美を作り出す営みは人間の無力、浅はかな知恵を知らしめると痛感する。それにしても荒木さんは良き知人に恵まれたものである。羨ましい限りである。

 「歓楽の街の街路樹夾竹桃」
 「噴水に溢るる光ラスベガス」
 「杯を干す八十路なかばの夏の旅」