2010年(平成23年)3月10日号

No.497

銀座一丁目新聞

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茶説

あまり杓子定規に考えるな
 

牧念人 悠々

 夜間、車の殆ど通らない通りで赤信号待ちをしている時。あなたはどうするのか。私は左右確認して通る。これは明らかに道路交通法第7条違反である。違反者は3ヶ月以下の懲役か3万円以下の罰金である。これを人がとがめるであろうか。現場で警察官がいたとしても黙認するであろう。世の中というものはこういうものである。物事を杓子定規では考えない。自動車のハンドルに「遊び」があるのと同じである。もちろん愚直に信号待ちをしていてもよい。

 もうひとつ例を挙げよう。劇作家の井上ひさしさんが若い時、本屋で国語の辞書を万引きした。本屋の主人は「今後このようなことをしたらダメだよ」とその国語の辞書を井上さんに進呈したという。この時、警察につきだされていたら劇作家「井上ひさし」は誕生しなかったかもしれない。本屋の主人に人を見る目があったのか。“武士の情け“であったのであろうか。

 どうも納得のいかないのが前原誠司外相の辞任である。正直言って私は民主党政権が嫌いである。早く変わってほしいと思っている。だが、前原外相のどこにやめる理由があるというのか。この国はいつの間にか「重箱のすみをつつく」ようなことをし、「武士の情け」を忘れてしまった。辞任した前原誠司外相は本当に悪いことをしたのか。「政治資金規正法」は確かに外国人からの政権金を禁止している。その趣旨は特定国の意思が国内政治に反映されることを防ぐためである。前原外相の献金の相手は京都市山科区で焼肉店を経営している72歳の在日韓国人である。前原外相が中学生のころからの知り合いだという。いわば善意の献金である。この献金で「特定国の意思が日本の政治に反映される」ことは絶無である。形式的な違反である。「以後気をつけよ」と許すのが武士の情けである。重箱の隅をつつくようなことをするな。ただ、前原外相の辞意が政治的思惑から実現したとすれば言う言葉はない。

 新渡戸稲造は「武士道」で「愛、寛容、同情、憐憫は古来最高の徳として、すなわち人の霊魂の属性中最も高貴なものとして認められた」として仁と惻隠の心を説いた。今の時代はこの「愛、寛容・・・」の心が希薄になってきたと言える。ともかく世の中はみんなが聖人君子面をして住みにくくなってしまった。