安全地帯(312)
−信濃 太郎−
似て非なるジュウトジユウに悩む国
友人の前沢功君が実弟・孝侑さんの「よみうり時事川柳」に入選した句をいくつか送ってくれた。今年1月8日、米国アリゾナ州トゥーソンで民主党の女性下院議員ガブリエル・ギフォードさんが銃で撃たれ重傷、6人が死亡した事件があった。それを孝侑さんが「似て非なるジュウトジユウに悩む国」と詠んだ。アメリカは「銃を持った民主主義国」である。「銃」と「自由」を憲法で保障している。この時事川柳は「よみうり寸評」(1月13日)でも引用された。秀逸である。
古来川柳の名文は「ダンナハイケナイワタシハテキズ」と言われている。明治9年、熊本で蜂起した神風連の一隊が鎮台司令官種田政明少将を襲い惨殺した(10月24日)。一緒に寝ていた女性も重傷を負ったが、けなげにも郵便局に駆けつけ打電したという。この電文、実は物好きが事件を風刺した川柳であった。
孝侑さんの時事川柳を紹介する。
民主党「別れさせ屋」をそっと呼び
飛び降りた無私と勇気に金メダル
火の国をアイスランドと呼ぶ皮肉
ヤワラちゃん政治と金を切り離し
人生を一人で終わりに出来ぬ奴
川柳は柄井八右衛門に始まる。号を川柳と称した。享保3年(1718年)の生まれ、40歳の時、前句附の点者になりやがて江戸随一の点者と称される。前句附を改めて古川柳を創始した。古川柳も面白い。
おどりこのかくし芸までしてかえり(ドガの「踊り子」の絵を思い出させる)
借金をいさぎよくする祭前
月の座があいていんすと文が来る
子やす貝女だてらになやみけり
南無女房ちちをのませに化けて来ひ
親のすねを今をさかりとかじるなり
川柳には庶民の心情が良く出ている、世相を滑稽に描き、風刺する。
「いずれネット カンの喉口に 突きささる」 無用庵
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