2009年(平成21年)12月10日号

No.452

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追悼録(368)

奥克彦大使をしのぶ日英親善ラグビー

 去るもの日々に疎しという。うかつであった。11月28日、ロンドンの西部リッチモンド・アスレチッククラブで日英親善ラグビー「奥克彦記念杯」が行われたという(産経新聞)。奥大使(当時45)は2003年11月29日イラクで井上正盛書記官とともに凶弾に倒れ殉職した。あれから6年もたつ。イラクは今、テロの脅威にさらされながら民主化への道を歩みつつある。親善のラグビー試合は今年が5回目。日本側が「ロンドン・ジャパニーズ」英国側はオックスフォード、ケンブリッジ両大ラグビー部のOBでつくる「キュー・オケージョナルズ」。試合前に故奥大使のために1分間の黙祷がささげられた。試合は英国側が44対31で「記念杯」を手にした。この日参加者は60人。イギリスでまだ奥大使のことを忘れずにいる人々がたくさんいるのは嬉しい。早稲田のレギュラーでもありオ大留学時代、日本人として初のレギュラーを獲得した奥大使のラグビーを通じての絆が強かったといえよう。スポーツは国境を越え、友好親善を深め、絆を固くする。このことを民主党の「事業仕分け人」はわからない。スポーツ予算をばっさりとカットした。公開の場でその愚かさを国民の前にさらけ出した。
 私は奥大使がよく口にしたという「今やらなければいつやるんだ。今に精いっぱい死力を尽くせ」が好きである。人はえてして物事をすぐにやらない。明日延ばしにする。また時期尚早ともいう。時にはしり込みする。これでは何も出来ない。大きな仕事を任されない。やる以上は「死力を尽くす」のだ。人間死んだつもりでやれば何でも出来る。
 奥大使が英国大使館在勤中「イラク便り」をメールで発信していたのは有名な話である。その中に「元気なイラクの子供達」(平成15年5月14日)の一文がある。それによると「イラクの子供達は皆パッチリとした目で生き生きしています。教室は狭く、ながいすに人、7人がつめて座って授業を受けている有様ですこれから盛夏に向かい、教室は60度近くに気温が上がることもあるそうです。もちろん扇風機すらありません。(略)いつの時代にもどこでも、子供達の目は純粋に好奇心を語ってくれます。イラクの子供達のきらきらした目を見ているとこの国の将来はきっとうまく行くと思えてきます」とある。
 日本の小、中学校の先生たちは教室でイラクの子供達の様子を語れ。時には奥大使の事績を取り上げよ。そのほうが教育的効果は大きい。日本の子供たちは恵まれすぎている。日本の小、中学校での生徒・児童による暴力事件が年々増え、2008年には6万件を数えた。国が平和で、豊かであるのは一面、緊張感を失わせ人間を堕落させてしまう。先生たちよ「今やらなくていつやるんだ」。
 

(柳 路夫)