花ある風景(352)
並木 徹
竹山愛、千葉県文化会館でフルート演奏する
ひそかに期待しているフルート奏者竹山愛さんが千葉県文化会館で開かれる「第23回若い αコンサート」で演奏するというので出かけた(6月28日)。雨模様の日曜日にかかわらず1800人入る大ホールはほぼ満員であった。23回を数えるこのコンサートは千葉県出身者や在住の将来有望な若い演奏家に出演の機会を与え、その音楽活動を県民とともに支援していこうと生まれたものである。この日、出演した3人はいずれも千葉県生まれの千葉県育ちであった。実川風さん(ピアノ)は東京芸大の音楽部器楽科2年生、竹山愛さんは東京芸大音楽部を卒業、現在同大大学院修士課程在籍中、原田桂さん(バリトン)は東京芸大音楽部声楽科卒業、大学院修士課程・博士後期課程修了して博士号を持つ。期せずして東京芸大の現役とOG、OBの競演という形の演奏会となった。
コンサートは岩村力さん指揮「ニューフイルハーモニーオーケストラ千葉」のベートーヴェン「プロメテウス創造物 序曲 OP.43」ではじまる。この管弦楽団は24年の歴史を持つ千葉県唯一つのプロのオーケストラである。
実川さんは「ピアノ協奏曲 第三番 ハ短調 Op.37」(ベートーヴェン)を演奏。若々しい鍵盤さばきであった。第三楽章(ロンド:アレグロ)をダイナミックに歌い上げる。舞台を退場する際もっと胸を張って歩けばなおよかった。
現代音楽が得意の竹山さんは音楽フアンのことを考えてか、カール・ライネッケの名曲のひとつ「フルート協奏曲 二長調 OP.283」を選ぶ。私は竹山さんの高い張りつめた旋律が好きだ。フルートの音色に個性があるとすればここに彼女の個性があるといいたい。その意味では第三楽章(フィナーレ:モデラート)が心に響いた。純白のドレスに身を包んだ彼女の表情は輝いていた。
バリトンの原田桂さんは演目を芸大受験の際、卒業試験の時など節目節目で歌ったアリアを選んだという。原田さんが一番の落ち着いて堂々として表情たっぷり歌いあげて舞台を楽しんでいたように私は感じた。歌劇「ドン・ジョヴァンニ」よりレポレッロのアリア「奥様これがカタログです」(モーツァルト)は面白かった。昔捨て彼女に詰め寄られたジョバァンが家来のレポレッロに後を任せて退散、レポレッロが「捨てられたのはあなただけではないのですよ」と慰めながら歌う。原田さんはカタログを示して表情豊かに語りかける。ユダヤの格言に「女とけんかするのは傘をさしてシャワーを浴びようとするものだ」とある。やはり彼女とは言い争いをせずに「逃げるが勝ち」か。原田さんのアリアが胸に応える。
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