2009年(平成21年)6月10日号

No.434

銀座一丁目新聞

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花ある風景(349)

並木 徹

リラ冷えや友の情け手が届く(悠々)

 二年ぶりに札幌を訪れた(5月27日から29日)。2年前の収穫は俳人寺田京子の存在を知ったことだ。彼女の「日の鷹がとぶ骨片となるまで飛ぶ」の句に圧倒されて、親友松岡峻君(札幌在住)に頼んで寺田京子句集「雛の晴」、第二句集「火の鷹」を手に入れた。今回は同期生、野俣明君(恵庭市在住)の深き友情が身にしみた。
 まずは北海道の同期生の会に出席する(5月27日・KKRホテル札幌)。参加者は11名。話は田母神論文、海上自衛艦のソマリア沖出動、災害救助の出動問題など多岐にわたる。もちろん亡き同期生の大学時代の恋愛のやわらかな話題にも及ぶ。私は10月に開く全国大会の案内と4月の長野県佐久市・権現山碑前祭の模様を話した。席上、野俣君が「ボケます音頭」と「ボケない音頭」を配る。
 「ボケます音頭」2番「仲間もたずに一人だけ/いつもすることない人は/夢も希望も逃げてゆく/年も取らずにボケますよ」
 「ボケない音頭」1番「風邪も引かずに転ばずに/笑い忘れずよくしゃべり/頭と足腰使う人/元気ある人ボケません」
 歌の文句通りで、要は実行するかどうかにかかっている。夕食前大通公園を野俣君と散策する。かすかなリラの香りをかぎながら写真を撮る。
 翌日朝、中央区南15条西5丁目にある「札幌護国神社」に参拝する。ご祭神は西南の役に戦病没した屯田兵、各戦役の戦没者、殉職警察官、殉職消防官など25536柱。記帳簿によると、私たちより前に14名の方が参拝に訪れていた。次いで大連2中時代の親友・松岡峻君(陸士58期)を療養している南区真駒内南町「アウルコート真駒内」に見舞う。2年前に比べるとやせたが顔色は良かった。いまは車いす生活を余儀なくされ、話すこともままならない。こちらの言うことはすべて分かる。自衛隊時代、松岡君と同じところで過ごしたことがある野俣君がその頃の思い出話をする。夫人の話では一人で風呂に入れるようになったという。ぎこちないが一人で和菓子を口に運んでいた。私は思いがあふれてしゃべれなかった。二人とも大連2中は転校生であった。松岡君は旅順、私はハルピンからであった。それが縁ですぐ友達になり、休みには天津に旅行に行ったりした。4年で陸士に入学したので私より1年先輩となった。私が陸士に入ると早速、私の中隊を訪ね、激励してくれた・・・。帰る時「じゃ、また・・」と言ったらいままであまり表情を変えなかった松岡君が悲しそうな顔をした。
 そのあと、野俣君の車で小樽を案内して頂き、恵庭では温泉にまで入り、そのもてなしぶりはかゆいところに手が届くようであった。野俣君とは3年前、権現山の碑前祭で知り合い、彼に望月高校生徒の研究成果である「望月陸軍士官学校」の冊子を送ったのが縁で交流を重ねてきた。友のもてなしは嬉しき限りであった。