2008年(平成20年)12月20日号

No.417

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茶説

マスコミ世論は正気の沙汰ではない
 

牧念人 悠々

 日本の社会はその人物の仕事の実績でなく、その人物の些細な失言、間違いで評価しがちである。その人が一国の総理であれば国の悲劇である。正直言って私には麻生太郎首相の支持率が20パーセント台に下落した理由がよく分からない。麻生首相はアメリカ、中国から評判がよい。その端的な例は11月に行われた主要国と新興国20ヵ国による緊急首脳会合での麻生首相の発言である。ここで麻生首相はバブル時の日本の経験を話し財政出動に反対であった米国のスタンスを変えさせた。米国は公的資金により連邦住宅抵当公社と連邦住宅貸付抵当公社の救済や銀行間取引の保証などをしている。これらの措置に投入される公的資金は最大で計8兆ドルにのぼるという(「ニューズウウィーク」日本語版12月24日号)中国も57兆円の景気刺激策を決めた。バブル崩壊後日本では株と土地だけでGDPの3倍の1500兆円の国民の冨が失われた。それでも政府の財政出動のお蔭で国民所得を維持することが出来た。失業率も5パーセント台ですんだ。もちろん国の借金は800兆円にふくらんだ。各国は日本の成功・教訓に耳を傾けた。12月12日、麻生首相から発表された「23兆円に上る緊急経済対策」もこの延長線から生まれ たものである。
 経済評論家・野村総研チーフエコノミスト・リチャード・クーさんは「麻生首相は日本が世界を正しい方向へ導くために不可欠な人物なのだ。字を読み間違えた位で政権をつぶしてしまえと言う今のマスコミ世論は正気の沙汰ではない」という(12月16日産経新聞)。このように発言する人は珍しい。私は同感する。
 文字の読み方など誰でも読み違えたり字を間違えたりする。テレビ朝日の報道ステーションでさえ「実を結ぶ」を「身を結ぶ」と字幕に流して古舘伊知郎さんが頭を下げていたではないか(12月15日)。その番組でブッシュ米大統領にテレビ局の記者(29)が靴を投げつけたのを肯定するような発言をした。これにはいささか疑問を持つ。記者はあくまでもペンで勝負するもの。「いくら夫を失った妻、親を失った子供の気持ちだ」と言って靴を投げるのを肯定するわけにはいかない。ブッシュ大統領が「靴のサイズが10(28センチ)だった」と云ったのを非難していたが、それは大統領の記者をかばう発言であったと私はとる。「ブッシュは悪者」とばかりすべてを悪意に取るのはいかがなものか。昨今のテレビはニュースを正確に伝えず、事件を劇場化し、皮肉に捕らえて伝えるのがキャスターのつとめと思いこんでいるようだ。個性的で思ったことをずばりと発言する麻生首相は格好の「テレビの的」となった嫌いがある。その正しい姿が伝えられず、本筋と離れた所での発言が俎上にのぼり、問題視されすぎた。支持率が落ちるわけである。不幸なことに今多くの国民に映っているのは麻生首相の虚像に過ぎない。民主主義は時にはこのような虚妄も育てる。それでも民主主義はやがて正しい姿に戻すと私は信じる。