2008年(平成20年)12月1日号

No.415

銀座一丁目新聞

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山と私

(50)
国分 リン

――黄金色の落葉松散る大弛峠から「金峰山」へ――

 奥秩父の盟主と日本100名山として知られる「金峰山」2599m、日本各地に同名の山があるが、多くは奈良県の吉野の金峰山に由来し、山梨県と長野県堺に位置している。今は日帰りできるコースがあると教えられ、EWCの10月に企画し、5人の参加で実施した。
 お天気は全国的に晴れマーク、塩山駅には大勢の登山客が降りそれぞれの目的地に散っていった。タクシーがドライバーを入れて6人乗りなのも好都合であり大弛峠(2365m)までの道は一年前に舗装され整備されたと聞く。フルーツ街道を気持ちよく山道へ、周りの落葉松は黄色に色付き、上へ登るほど色濃くなり皆で歓声を挙げ、金峰山の五条岩を近くに見つけて「あそこに登るのね。」など話していると、車の駐車が行列を作り大勢の登山者がいることを知った。車なら早朝からゆっくり登れる。夕暮れの早いこの時期は早朝からの行動が一番安心なのだ。塩山駅から1時間で大弛峠へ到着。帰りの時間を16時に運転手さんにお願いした。電車で一番速い手段を考えても10時の登山開始になる。ストレッチ名手のSさんの指導で流れるように体を温めた。私の大失敗で、地図を確かめずにスタート、小屋の前から木で出来た立派な階段をひたすら登り、何と到着したのは「前国師岳(2580m)」の頂上。「富士山」がよく見えとても素晴しい展望であった。でも目的の反対方向で途中「何故五条岩が離れるのか」と仲間が言っていたのに、脇目も降らず直進あるのみ、私の歩き出して考える悪い癖が出たのだ。  呆然となった。    
 地図を見ない皆の責任と慰められ、急いで30分で駆け下り、反対方向へ進むとしっかり金峰山登山口があり、なだらかに樹林帯の中を登り、ベンチのある朝日峠へ12時着、朝日岳へ登ってから昼食をと12時30分朝日岳(2579m)到着。
前方は鉄山への切れ落ちたガレ場と金峰山への登る道がはっきり見えたが、山の天気は変化が速いのでアッと思う間にガスに蔽われてしまい、冷気がただよい、手袋をしないと冷たくなる陽気になった。とにかく16時の下山は無理なのでタクシーへ連絡しようとしたが携帯は圏外であった。ガスは晴れなかった。
「ここから無理をして金峰山へ登っても帰りは暗くなってしまうので、ここから帰りましょう。来年花の時期にまた登りましょう。」一人も「いや登りたい。」がいなかった。安心した。本当に未消化のまま下山するのは始めての事である、申し訳ない気で一杯ながら、ヘッドランプを点灯しながらも暗くなってからの下山は危険だ。「本当にこの朝日岳から下山します」皆気が楽になったのか、ゆっくり周囲の景色を楽しみ、一歩一歩の歩きを楽しむ。いつもこんな気持ちで歩けたら楽しい山行になるのに何故だろう。いつも余裕がなく精一杯必死で頂を目指しているからか。
  「山と私」50回にこのミスを書くことになったのも、何事も初心に帰り、一から地図読みをしてきちんと計画をたて、自然や山を甘く見てはいけないとの教えと心に刻み込んだ。