2008年(平成20年)7月20日号

No.402

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花ある風景(317)

並木 徹

戦うことを忘れた国家

 友人の野俣明君から「東大の5月祭で航空自衛隊の田母神俊雄空幕長が講演したのを知っているか」と電話してきた。「知らない」と答えると、今、友人に貸している衛星放送の「チャンネル桜」のDVD(6月19日「今日の自衛隊」)を送ると言った。東大の安田講堂で制服の航空自衛隊の空将が講演するのは戦後初めての出来事である。戦前、東条英機大将が首相の時、講演をしたことがある。
テレビに出演した東大法学部の学生、大石広行君の話によれば、これまで幾人もの國のリーダーを輩出した東大で安全保障・防衛問題についても関心を持つべきであると考え、「東大国家安全保障研究会」を立ち上げて企画したという。田母神空幕長は講演の中で「対空警備をしていないと、簡単に領空侵犯をされてしまう。それをさせないと言うことが抑止力となり、戦争を起こさせない事につながる。自衛隊の実力はバブル崩壊前はそれなりの実力があったが、今は中国、ロシアに比べると軍事予算が少なく20年もたつとその軍事力の差ははっきりと出る。とりわけ航空戦闘力は技術との競争である。整備力も戦力のひとつである。その意味で防衛産業の維持と拡大は欠かせない。公のために尽くすのは大切なことである。高い志を以て国家国民のためのリーダーになってほしい」とのべた。
田母神空幕長はユーモアのある方で「本日は爆弾発言をすると期待する向きもありますがそんなことはしません。防衛白書を読み上げます」と会場を笑わせる一幕もあった。
大石君ら学生20人は今年の2月2泊3日、北海道南恵庭の自衛隊で体験入隊をしている。これからも東大総長と自衛隊のトップとの対談の企画も考えているという
拉致問題、竹島の領有問題、中国原視力潜水艦の領海侵犯を見過ごした事件など國の主権を侵害されながら、徒に手をこまねいている政府、どうしてなのか。国際政治学者、黒野耐著「戦う事を忘れた国家」(角川ONEテーマ21・2008年7月10日刊)のなかで「武力による決定の担保を持ったうえで、積極的外交を行って問題を解決する」必要性を説き、戦うべき時には戦う国家であれと強調する。ともかく日本には不思議なことがいっぱいある。その最たるものが「集団的自衛権」の解釈である。日本政府の解釈は「我が国は独立国として集団自衛権を保有するが、それを行使することは自衛の限度を超え、したがって憲法上許されない」と言うものである。現実の状態を考えよ。一緒に戦っている米軍が襲われ敵の攻撃を受けているというのに「自衛の限度を超えている」といって戦うことができないというのはナンセンスである。
大体、「保有するが行使できない」なんて馬鹿なことがあるはずがない。この「集団的自衛権」の解釈変更を求めた「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の最終報告書が首相に出された(6月24日)。”戦うことを忘れた”福田康夫首相の態度は煮え切らない。拓殖大学学長渡辺利夫さんが言うように「お蔵入り」は許されない(7月9日産経新聞「正論」)。
「自国の安全保障を他人任せできた日本」はそろそろこのあたりで舵を切り替えねばならない。その兆候は見えている。それは時代の要請でもある。

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