安全地帯(220)
−信濃 太郎−
「友人の孫、「トーキョーワンダーウォール大賞」をとる」
東京都現代美術館に行く(7月2日)。東京都民でありながら現代美術館ができてから13年もたつというのにはじめてである。江東区三好町の木場公園の一隅にあった。お目当ては友人の安藤重善君の孫、小畑多丘君の作品である。同館で開催中の「トーキョーワンダーウォール公募2008」の「立体・インスタレーション作品」(彫刻部門)で「大賞」(副賞100万円)を獲得したからである。この部門の応募者は128名。今春、東京芸大を出たばかりの青年である。安藤君の手紙には「今年末から東京都庁に展示されるそうです。新人として信じられないくらいうれしいことでした」とあった。
同館地下1階企画室の小畑君の作品「Takuspebboyger」(写真参照)の前にしばしたたずむ。宇宙時代の未来人間であろうか。等身大の未来人が人体をひねり何かなさんとする構えを見せる。頭は円筒形、目は水平の箱型。2本のアンテナのようなものが出ている。知能抜群、眼力絶大。情報収集力優秀というスーパーマンを象徴しているのだろうか。大地に足をしっかりつけているかのようにでかい足。両手の親指はまっすぐ天を指す。親指は強い意志を示し、「平和」を意味するのであろうか。そんな想像をした。
ふと、康円作の「木造北方眷属像」を思い出す。立像で左手を顔のところまで上げ、右手を腹の所まで出し、両手はしっかり握りしめ、来るなら来てみろといったポーズであった。北方守護を受け持つ力強い毘沙門天像であった。小畑君の作品もそうだが両手に意味があるような気がする。
現代美術はその造形から自分自身で感じとればよいであろう。かって私が「抽象はよく分からない」といったら高名な美術評論家が「樹木も抽象ですよ」と明快に説明された。
造形がバランスよく、力強さ、勢いなどを表現し、感動なり共感を与えればいい作品といえるのであろう。もちろんこの日「平面作品」(抽象画)入選者104名(応募者数1104名)の作品が展示され、とくと拝見した。
トーキョーワンダーウォールは都庁の壁面を若手美術作家の作品発表の場としようと2000年5月都庁舎内にオープンした。昨年からは「立体・インスタレーション部門」が新設された。小畑君の作品は今年の末から都庁第一本庁舎南展望室に展示されることになる。東京都もなかなか立派な文化事業をやるなと感心した。