2008年(平成20年)5月20日号

No.396

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茶説

花が語る人の心
 

牧念人 悠々

  この五月、我が家のミカンの木に五年ぶりに小さな白いミカンの花がいっぱい咲いた。昨年と今年の春にミカンの木の回りに肥料を施した。昨年はわずか5個ほどミカンが実ったに過ぎない。今年の秋が楽しみである。五年前には何にもしなくてもミカンがたわわに実った。それがどうしてかここ数年実らなくなった。一念発心して昨年から木を育てる決心をした。ミカンの木の周りに穴を掘って油かすを撒いて埋めた。木は主人の心を知るのであろうか。そういえば、庭を手入れに来た年配の庭師は木に何か語りかけていた。夏には殺虫剤を撒く予定である。労を惜しむまい。
 花という字は「くさかんむりに化ける」と書く。季節ごとに花・木が変化を遂げるからであろう。人の手が加わればなおさら新しい変化を見せる。花のつく熟語を羅列すると、花嵐、花形、花冷え、花びら、花房、花街、花実、花道、花婿・花嫁、花輪ETC・・・。人との関わりは深い。
 スポニチ登山学校の卒業生で作る「山の会・クマリ」の会報誌(5月7日発行)には「栃木 石裂山(おざくさん・標高879.4b)ピンク考」と題してあかやしおツツジのことを 桐谷真理子さんが書いている。「東の剣、見晴台、西の剣付近はピンクの世界、こんなにやしおがあったんだっけ?自然頬が緩んでしまうのはしかたないねー。ピンクといっても今日のうすいピンクを選んだだけでも鴇色(ときいろ)、紅梅色、桃色、1斤染、退紅(あらぞめ)、石竹色、中紅、洗朱(あらいしゅ)と奥ゆかしい名前がある。日本語はいいよねー」
 桐谷さん一行4人は4月20日(日曜日)午前6:31北千住を出発、新鹿沼ー石裂ー加蘇山神社ー千本桂ー中の宮跡ー東剣の峰ー石裂やまー月山ー龍が滝休憩所ー石裂ー新鹿沼15:32の行程であった。
「ひとつの枝に一輪咲くことから『ひとつ花』といわれているのも風情がある。さくらとはまた違って大振りなのだがくどさは全くなく絹にほほ紅を刷いたような光沢もある。しろやしおが高貴といわれているがここのひとつの花も負けない気高さがある」と綴る。
石裂山はあかやしおツツジで有名である。ピンク色が8つも有るとは私は知らなかった。桐谷さんは学がある上、観察力も鋭いのには感心する。
 花はとんだ悪戯をする。人間の心の隙を突く。茨城県下妻市は5月24,25日、小貝川ふれあい公園で「フラワーフェスティバル」を開くため昨年シャレーポビーの種を市内の業者から購入、10月20日に地元ボランティアが植え、育てていた。ところが会場のポピー畑に栽培が禁止されている「アツミゲシ」が大量に咲いているのを巡回にきた下妻署員が発見、市当局はあわてて数十万本を伐採、焼却処分にした。警察官以外誰も気がつかなかったのか、花を知らないで何が「フェスティバル」だ。
市担当者は「赤い花と思っていたのに薄紫色できれいではないなと感じたが気づかなかった。数年前にも同じ花を栽培した」という(毎日新聞)。この人は惰性で仕事をしている。「疑問はその場でただせ」というのが仕事の遂行の原則である。他の人も同じであろう。多くの人々がこのケシの花を見たに違いない。疑問を抱いた人もいるが、誰も気がつかなかったわけである。「フラワーフェスティバル」の花にケシの花があるわけないものと思いこんでいる。下妻署員は仕事熱心であった。このような警察官もいる。ほめられて良い。「花を愛でる警察官」すばらしいではないか。
新聞の見出しは「ふれいあい公園でケシ栽培」であった。まさに「花が語る日本の世相」である。

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