2008年(平成20年)4月20日号

No.393

銀座一丁目新聞

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茶説

文化 芸術は生きる糧と知恵を与える
 

牧念人 悠々

  先輩は教えた。「暇があったらお芝居、映画、音楽会、展覧会に足を運べ」。おかげで勉強になった。スポニチ文化芸術大賞の贈賞式でその感をますます深くした。(4月14日東京プリンスホテル)。グランプリに輝いた落語家の立川志の輔さん(54)は受賞の挨拶の中で騒動を起こしている「聖火リレー」について「周りを取り囲まなければ、だれも聖火が走っていると分からないんじゃありませんか」といいた。この発想がいい。あの周りを取り囲んでいる青い服の「聖火警備隊」が邪魔だと皮肉ってもいるようにも聞こえる。昭和58年、29歳の時広告代理店の社員から立川談志に入門、落語の世界に入った異色の人である。創作落語「歓喜の歌」の笑いと感動は映画へと発展した。
 85歳の石井好子さん(優秀賞受賞)は壇上でシャンソン歌手、ダミアの「カゴメ」を熱唱する。歌手デビューから63年という。5月にはアルバム「ダミアからDAMIAまで」を発売する。85歳になってもこの仕事熱心さ、脱帽のほかない。NHKの「紅白歌合戦」で何げなく聞き流した、すぎもとまさと(58)が歌う「吾亦紅」が別の歌に聞こえるから不思議である。平成8年母親を亡くした杉本さんへ友人のちあき哲也さん(59)が作った詩に曲をつけたもの。それを広めたのがプロデューサーの松下章一さん(62)である。「団塊トリオ」(優秀賞受賞)の知恵の勝利である。同時にすぎもとの熱い母親への思いが共感を呼んだ。
 22年間も自主公演を続けてきた「劇団東宝現代劇75人の会」(優秀賞受賞)は「恍惚の人」(有吉佐和子原作)の朗読劇を披露する。私の身の回りには痴ほう症の知人が少なくないので身につまされる。この劇団を作ったのは菊田一夫。今年は菊田一夫の生誕百年の年に当たる。この夏に自主公演で菊田作品「がめつい奴」を上演する。お芝居をよくも22年間も続けてきたものだと感心する。劇団の運営、公演にはお金がかかる。予想以上である。このようなところへ道路特定財源からどのような名目にせよ、お金を出してもよい。国は文化、芸術に関心をもつべきだと思う。
 昨年亡くなった阿久悠さんへ特別賞が贈られた。阿久悠さんの「時代の壁に跳ね返る言葉を使え」は今でも耳に残る。スポニチには「甲子園の歌」を連載した。中でも大敗した高校の選手たちに「君たちは甲子園に貸しがある」と励ました詩は絶品であった。
 「本音の賞」「友情の賞」「共感の賞」として始まったスポニチ文化芸術大賞が文化、芸術がその時代を見事に反映し、人々に生きる糧と知恵を与えるのは素晴らしい。

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