1998年(平成10年)7月20日(旬刊)

No.46

銀座一丁目新聞

 

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茶説

大異を捨てて共生につく時代

牧念人 悠々

 クリントンとともに訪中したヒラリー夫人のために、万里の長城にエアコン完備の洋式トイレが設置されたという。

 アメリカ大統領を迎える中国側のなみなみならぬ歓迎ぶりがうかがえる。

 世界がEUとともに三極体制となるアメリカと中国が「世略的パートナーシップ」を結ぶのは平和のためには良い現象である。

 中国は19901月の湾岸戦争でアメリカの近代的電子兵器をみて自国の軍備のおくれを知り、軍隊の近代化整備を急務とするようになった。アメリカ接近の必要性のひとつはここにある。

 世界のお金がアメリカにすべて集まった感のある現在、アメリカとの貿易で国を富まし投資を増やしたいと中国側は願っている。

 江沢民の言を待つまでもなく、13億の人民を食わせるのは大変な政治的事業である。「政治的な権利よりまず安定が確保されなければならない」と強調する江沢民の気持がよくわかる。

 国際協力を考える時、相手国の人権が尊重されているかどうか調べてみよと教わった。人権問題からみると中国には高い評価を与えるわけにはいかない。天安門事件に連座して、まだ投獄されている政治犯がいる。またクリントン大統領が訪中前に数人の反体制活動家が拘禁された。

 米議会が大統領の訪中を非難したのにはそれなりの理由がある。筆者自身もこのような国と友好関係を結ぶのをためらう。

 しかし、世紀末の時代の流れは、人権問題の解決を中国に迫りながら、円安からくるアジアの経済危機とインド、パキスタンの核開発競争の脅威に、米中は接近せざるを得ない状況になっている。

 外交交渉は虚々実々、手練手管を使って、自分の国に有利になるようにする。想像をこえるかけひきがあるようだ。しかし、世界経済がひとつの大きなリンクになり、一国の経済不安がたちまち他国に影響する。一国の経済不安がたちまち国同志の紛争のタネになりかねない時代である。小異を捨てて大同につけとよくいわれるが、いまは大異をも捨てて共生につかなければならなくなっている。

 目先のことにとらわれて、時代の流れを見誤やまると、日本は世界から孤立してしまう恐れがある。

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