競馬徒然草(125)
―「名勝負」への期待―
「名勝負を期待したが、駄目だったね」。天皇賞(秋)についてのファンの感想だ。名勝負というものは、まず、互角の相手がいることが条件だ。そうでない場合は、「名勝負」は期待できない。そういう観点から見ると、今年の天皇賞(秋)は、確かに期待はずれに終わった。1番人気のメイショウサムソンは期待に応えて見事に勝ったが、2番人気のアドマイヤムーンがあえなく6着に敗れたからだ。「名勝負」どころか、「好勝負」も見られなかった。
この両馬の対戦が注目されたのは、前走の宝塚記念で好勝負したことによる。そこで2度目の対戦となる天皇賞が、より注目度を高めることになった。再び1,2着のレースとなれば話題を盛り上げることにもなったのだろうが、そうはいかなかった。好勝負を期待したファンは裏切られた。勝ったメイショウサムソンの強さだけが目立った。
そうではあるが、アドマイヤムーンが弱い馬だとはいえない。レース中の不利が大きかった。直線の入り口で外へよれた馬がいたため、外側の馬が次々と被害を受けるはめになった。アドマイヤムーンもその1頭で、レース後、岩田騎手は「もう1回、レースをさせて欲しいですよ」と語っているほどだ。釈然としない騎手は少なくなかった。
それでいて、最初に原因を作った馬も騎手も処罰されなかったのだから、後味の悪い天皇賞になった。レースに関するルールや裁定の基準などについて、再検討が必要なのではあるまいか。そんなことも感じさせた天皇賞であったようだ。 (
新倉 弘人) |