2007年(平成19年)10月20日号

No.375

銀座一丁目新聞

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安全地帯(194)

信濃 太郎

ネット社会のこの奇妙な出来事

 「銀座一丁目新聞」のブログは今年1月10日から始めた。ニュースに対する意見や出席した行事の感想、ときには私事について筆の赴くままに書いている。それでも知人、友人に「あれは面白かったよ」と感想を言われると嬉しい。このブログが巻き起こした事件には驚かされた。
 ブログで知り合った20歳の大阪市に住む会社員と長崎県諫早市の小学6年生の女子児童(12)が示し合わせ、会社員の自宅で一週間同居させたところ会社員は「未成年誘拐容疑」で諫早署に捕まった(10月13日)。この青年を私は責める気がしない。
 女子児童は今年の夏ごろからブログを開設、日記で自分の悩みをつづった。これに男性が優しく答えた。二人は親しくなり10月6日(土曜日・この日から3連休)JR小倉駅で待ち合わせ、大阪に向かった。「探さないで」という娘の書置きで親が捜索願を出したことから警察で調べたところネットのブログへの書き込みで大阪の男性がわかった。男性は大阪へ連れていった女子児童を自由にさせたまま会社へ出勤していたという。
 他人を自分の支配下に置く際「欺もうまたは誘惑による場合」を誘拐という。このような場合でも誘拐というのであろうか。
 男性にしてみれば悩んでいる女子児童を慰めたと思っているにすぎないであろう。女子児童自身「帰りたくない。お兄ちゃんは悪くない」と言っている。この女子児童のケアは相当に難しいように思う。
 なぜ女子児童のブログの日記に親や教師は応えることができなかったのか。自分たちの怠慢を反省すべきである。子供に「帰りたくない」といわせた「家庭」は酷ないい方だが砂漠同然でなかったのか。意外とこのような無関心・自由放任の家庭が多いのかもしれない。
 いまの新聞は報道のポイントがずれている。今回の場合読者が一番知りたいのは女子児童の悩みに対して男性が答えた「書き込み」の内容である。その内容が悩む女子児童の心に共感し、家出まで決意させたのだ。案外他愛ない言葉かもしれない。だが、その言葉のはし端しに彼女の琴線に触れるものがあったに違いない。私は知りたい。その内容は親も教師も知っておくべきだ。世の中に警鐘を与える意味でも警察も率先して発表すべきであろう。

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