産経新聞の古森義久記者はあるパーティの席上「ある問題で見通しをつける場合、朝日新聞の反対のことを書けば当たっていた」と挨拶の中で語った。そんなものかなと思っていた。今回の安倍晋三改造内閣対する新聞の評価について古森発言が正しいのではないかと信じるようになった。
私自身の立場は参院選挙の惨敗が選挙前に予想されたので「自民党・公明党に厳しい結果が出る。安倍晋三首相は潔くその進退を決すべきである」と主張した。(7月20日号「茶説」。この原稿は投票の7月29日前に書いた)しかし本人が続投を決意した以上、「問題はこれからである。まず内閣閣僚の人選に当たって実力者であるほかにお金と女性問題のスキャンダルを起こさない人を選ぶよう心がけねばならない」と注文をつけた(8月1日号「茶説」)さらに「(続投は)歴史的に見て最も困難な道である。一歩誤れば命取りになる。それは政権続投を選んだ安倍首相の運命というほかない」と結論づけた。
この立場に立って改造内閣を評価すれば、防衛、外交、年金。地方との格差など当面の政策課題に対する閣僚の布陣は手堅い、練達の士を配置したと考える。厚生労働相、舛添要一さん、総務相増田寛也さんの就任はサブライズであった。朝日新聞を見ると(8月28日2面)見出しは「党に仲間 閣僚に保護者」「執行部は政局・選挙シフト」「解散含み守りの布陣」「派閥会長を起用 安定を図る」「親安倍優遇反発の目」とある。
ここに「古森の朝日新聞記事に対する反対の原則」を適用して分析すると今後の安倍政権の行くへがある程度判る。選挙は最大の政治のショウーだからそれに備えるのは当然であろうが、記事の中にある「来夏のサミット後に解散だ」という見通しは外れ、もっと遅くなるであろう。手堅い練達の士を「保護者」にたとえるとは日本の政治をどのように考えているのかと問いたくなる。茶化して原稿を書くのが名記者だと思いこんでいる。「保護者」と考えるところに万事に見通しの間違いが起きる。「安倍おろしの動きが出かねない」と予想するがまずその動きは出ないと見るのが妥当であろう。
いずれにしても安倍改造内閣は日本の政治史上初めて選挙に惨敗して図太く存続を図った、したたかな政権である。事実を積み重ねて報道しないと間違いを起こしかねない。これまでの政治記事を蹈襲する時代ではない。
私は安倍政権の良い面を見守ってゆきたい。國の政治は国民のためにするものだ。新聞が政権発足早々に「政治大乱」(朝日新聞)と表現するのは新聞記者の奢りだ。国民が次の総選挙でその結論を出してくれる。私自身も風のまにまに揺れる無党派層である。矛盾した投票行動をする。朝日新聞に限らず他の新聞も私と見解を異にした。「民意」を掴むのは難しいと言うことであろうか。 |