前回の「茶説・二大政党時代へ指向す」(7月20日号)で「30日その結果が明らかになる。自民党・公明党に厳しい結果が出る。安倍晋三首相は潔くその進退を決すべきである」と主張した。予想通り自民党・公明党は「歴史的大敗」を喫した。続投の意向を表明した安倍首相は崖ヶ淵に立たされた。これからの政局運営は文字通り真剣勝負で立ち向い、常に勝利を得なければ責任を問われ、追い込まれる。民意は明らかに「二大政党時代へ指向」するのが明確になったといえる。問題は次の衆院選挙である。民主党がこのまま波に乗って衆院選挙でも勝ちを収めるかと言えば疑問を呈せざるを得ない。次の選挙まで2年間あれば安倍内閣は立ち直るチャンスがあるからだ。たとえば、海上自衛隊の艦船をインド洋に派遣する期間を延長する「テロ対策特別措置法」。11月1日に切れる。これまで民主党は反対してきた。その方針をあくまでも貫き通すのか。そうであれば日米同盟にひびが入る。日米の間にすきま風が入るようであれば、国益を損なうようなことになる。有権者はどう判断するか。参院での多数を頼んで民主党が何でも反対すれば墓穴を掘るようなことになりかねない。
新聞は「民意は安倍政権を否定した」として「戦後レジームからの脱却を全面に掲げ、改正教育基本法や国民投票法なども成立させた。集団的自衛権の憲法解釈の見直しについても進めていることに対して国民は明らかに『ノー』と言った」とする(7月30日毎日新聞)また「安倍政治への不信任だ」「展望なき続投」と批判する(朝日新聞)。
私は首をかしげる。安倍首相の「戦後レジームの脱却」路線は正しいと考える。今後続投する安倍首相が万一辞任する事態がおきてもこの路線は維持されるべきである。民意は年金の記録漏れを追求した民主党を評価したに過ぎない。無党派層の51lが民主に流れた理由である。自民党のへ流れた無党派層は14lに過ぎない(朝日新聞)。首相の路線まで否定したとは思えない。その端的、象徴的な証拠に比例区で拉致問題に尽力してきた中山恭子、自衛隊イラク派遣先遣隊長、佐藤正久がそれぞれ当選を果たす。さらに安倍首相を支えてきた群馬の山本一太が次点に299451票の差で、また和歌山で首相補佐官の世耕弘成が次点に299451票の差で、それぞれ破って当選している。
問題はこれからである。まず内閣改造の閣僚の人選にあって実力者であるほかに「お金と女性問題のスキャンダル」を起こさない人を選ぶよう心がけねばなるまい。次に年金問題である。年金受給資格者に対しては一人の受給漏れがないようにしなければならない。特段の注意を払う必要がある。特にこれまでの路線を断固として突き進めば、道は自ずと開けてくる。だが、歴史的に見て最も困難な道である。一歩誤れば命取りになる。それは政権続投を選んだ安倍首相の運命であるというほかない。 |