2006年(平成18年)9月20日号

No.336

銀座一丁目新聞

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茶説

麻原彰晃はテロの首魁だ

牧念人 悠々

 オウム真理教の麻原彰晃の死刑が確定した。麻原は13の事件にかかわり27人を殺した。1996年4月から始まった公判で真相を語らなかったが彼は「テロの首魁」である。松本サリン事件(1994年6月27日)、地下鉄サリン事件(1995年3月20日)、自動小銃の密造、VXの生成、青酸ガス発生器の開発、東京・横浜で自動車からの炭素菌の撒布など一連の行動を見れば、教団は宗教に名を借りた凶気の武装集団であった。東京地裁の一審判決はいう。「国政選挙に打って出て惨敗した(1990年2月18日25人が立候補、全員落選)ことから武装化による勢力拡大をはかり、ついには救済の名の下に日本国を使配して自らその王となることを空想した」(2004年2月27日)。これがオウム真理教の実態である。平成の世にこんなバカげたことを考える男が出て、さらに追随する若者もいたのである。起訴されたおもな被告17名の内一審で死刑の者は11名、他の6人は無期懲役である。二審では死刑10人、無期懲役4人、控訴中2人である(他の一人は無期懲役確定)。見逃せないのは大学で医学や化学を学んだ若者が唯々諾々と麻原教祖の言いなりになった事実である。若者のなかには心の虚しさを時として口ざわりの良い新興宗教に魅せられるということだ。本当の意味で「個の確立」が出来ていない。付和雷同し、大勢順応する。長いものには巻かれる。よく言えば「和を尊ぶ」のである。組織の中で「異を唱える」ことが出来ない。識者が言う「偏差値教育の弊害」より日本的国民性に起因するような気がしてならない。世の中が常に矛盾に満ち、邪悪がはびこるとすれば、カリスマ性あるものが世直しを唱えれば人々が徒党を作り、教祖の号令一下、悪事を果たすこととなる。このような素地は日本には十分ある。いまだに「アーレフ」と名を変えてオウム教の信者が多数いるのを見ればわかる。
 さらに疑問に思うのはオウム真理教がこのような武装集団と知りながら、公安調査庁が破防法に基づき教団の解散指定処分を公安審査委員会に請求した(1996年7月11日)のに破防法適用を棄却した(1997年1月31日)ことである。新聞はこの委員会のメンバーから棄却した理由について意見を聞くべきだ。明らかに「テロ集団である」という認識がなかったのである。その見識の無さを責められてよい。テロで殺された人々に改めて哀悼の意を捧げると共に、遺族の方々のやり場のない無念さと怒りに共感を示しつつ、今なおサリンの後遺症に悩まされている人々に神のご加護のあらんことを祈る。

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