2006年(平成18年)7月1日号

No.328

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(9)
オカリナ職人 藤田 東悟

−哀しいこと−

 

  哀しいことは3週間程前、オカリナを造るためいつもの道を車で窯に向かい、窯の入り口の5〜6mの所で前方に動物らしき何かが横たわっておりました。その手前で車を止め、車から降りて何の動物なのかを確かめると驚くことに野性動物の「テン」の変わり果てた姿でした。姿は「イタチ」と同じですが少し黄色みをおび明らかに「イタチ」とは違い綺麗な毛並みをしておりました。歯は野生の動物らしく鋭く光り野性味を感じさせます。姿はしっかりしており車にひかれたのではなく跳ね飛ばされたのだと思います。非常に愛くるしい顔立ちでただただ可愛いです。ただし死んだ後カラスに突かれた様な傷が2箇所ありそれ以外は綺麗な姿でした。なんで私が通る道にそれも直ぐに分かるようにそこに居たのか、私に見つけて欲しかったのかどうなのか分かりませがそのまま道に放置しておくわけにも行かず、窯の所まで手で運び穴を掘り、塔婆(端材にテン君の墓と描き)を立てて埋めてやりました。翌日塩をまき清め、お線香あげました。安心して生活できる山に戻れ野山を駆け回っていると思います。

 前に「いたち君」への思いを書きましたが「いたち」ではなく「テン」だったのかもしれません。「テン」はイタチ科の動物ですから一瞬の出来事だったので「イタチ」と勘違いしたと思います。窯は「天引き」と言う地名のところにあり私のオカリナも「天響」と付けてありますが、その場所で漢字では「天」とは書きませんが言葉では「てん」と発音し、なにか因縁のようなものを感じました。野生動物が山に餌が無く人の生活圏に入り込まなくては生きていけなくなってしまったか、それとも安易に餌が見つけられることを覚えてしまったのか?人間の車社会に巻き込まれこのような事故に会ってしまったのかもしれません。なんとも哀しいことです。

 藤田氏のオカリナ紹介サイト(販売もあります):
   http://www18.ocn.ne.jp/~tougo/

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