2005年(平成17年)10月20日号

No.303

銀座一丁目新聞

上へ
茶説
追悼録
花ある風景
競馬徒然草
安全地帯
自省抄
北海道物語
お耳を拝借
山と私
GINZA点描
銀座俳句道場
広告ニュース
バックナンバー

茶説

TBSはやんわりと楽天の提案を拒否せよ

牧念人 悠々

 TBS社長 井上弘 様

 御無沙汰しております。久し振りにテレビで拝見したあなたの顔はいささか困惑気味で渋い様子でした。慌てることはありません。じっくり時間をかけて検討すればよいのです。楽天はTBSの質の高いドラマ番組など映画、音楽、ドキュメントの番組が欲しいのです。単なる業務提携ではなく共同持ち株会社設立による経営統合を提案したのは大きな利益を目指すからである。今TBSの立場は一見攻められているように見えますが強いのです。「イエス」とも「ノー」ともいえるのです。どっしりと構えて事にあたればよいのです。ネットと放送の提携は時代の流れです。そこに目をつけて楽天がTBSに斬り込こんできたわけです。楽天のスタッフは私が調べた限りでは優秀です。それなりの準備をしておると見ていいでしょう。業務提携の話中に大量の株を購入したからといって驚くにあたりません。今、話題の外交官佐藤優さん(休職中)は「外交とは『対話、利権、圧力』を巧みに使い分けてて行わなくてはならない世界です」と言っております(その著書「国家の自縛」産経新聞社)。楽天の15.46パーセント(2938万株)の株の取得はその『圧力』の一部です。予定の行動です。目的を達成するためにはそれぐらいの事をします。非難するよりもTBSの内部を固め、防衛策をとるべきです。提案された内容自体悪くはありません。TBSの企業価値評価委員会の委員長諸井虔さんが「合併にくらべてマイルドなやり方だ。情報技術時代の中で、いいものが生まれる可能性がないとはいえない。いいアイデアが出たらそれを実行に移すことはけして悪いことでない」(10月16日スポニチ)と言っている通りです。もっとも諸井さんも「先に株を買い占めた。話したことと違う」と激怒しているそうですが、問題は組む相手です。三木谷浩史楽天社長が組む相手に相応しいか検討の必要があります。私は三木谷社長が東北楽天ゴールデンイーグルスの監督田尾安志さんを3年契約に関わらず1年でクビにしたやり方を見ていささか首をかしげます。単にプロ野球の監督交代という小さいことではないかと言うかもしれないが、そこに経営者の資質が垣間見えてきます。金儲けは上手かもしれないが信が置けないような気がする。もし組むとすれば大学の研究室を選んだほうがよいのではないでしょうか。情報技術関係で企業と提携を求めている大学の研究室は少なくありません。目先よりも5年10年先を見つめたほうが良いと思います。そのほうが意外と大きな果実を得ます。今度はこちらから『圧力』をかけてもいいでしょう。報道はお手のものではないですか。遠慮は要りません。楽天でなくても優秀なネット企業はいくらでも存在します。テレビの存在は報道を含めて質の高い番組を視聴者に提供するにあります。利益はその結果です。昔から上手い儲け話にはトゲがあるといいます。賢明な井上社長にはすでにわかっておられると思います。私なら今回の楽天の提案をやんわりと拒否いたします。
 ご自愛ください。

このページについてのお問い合わせは次の宛先までお願いします。(そのさい発行日記述をお忘れなく)
www@hb-arts.co.jp