競馬徒然草(28)
―調教師に冬の時代―
美浦トレセン所属の古賀一隆調教師(69)が、現在管理している18馬房のうち6馬房を返還することになった。9月22日、JRAが発表した。厩舎経営の上では、少しでも馬房を増やしたいと考えるのが普通だ。それを逆に減らそうとするのは、どういうわけか。疑問に思ったファンも多いだろう。「馬房返還」など、滅多にないことでもある。
古賀調教師は2006年2月で定年を迎える。その定年を前に馬房返還という事態に陥ったのは、経営の行き詰まりが一因とみられている。最近は預託馬が減少し、現在は馬房数より1頭多い19頭にまで減っている。しかも、そのすべてが稼動しているわけではない。今年の延べ出走回数は9月19日現在、76回(他に交流競走9回)と、18馬房以上の調教師では、1馬房当たりの出走回数が最も少ない。今年の勝ち星は僅か3勝で、東西を通じてリーディング207位に低迷している。
ちなみに、リーディング・トレーナーのトップは藤澤和雄調教師で、43勝。次いで音無調教師36勝、国枝調教師35勝、池江(郎)調教師32勝と続く。リーディング上位に活躍馬が多いのは、有力馬主が良質馬を多く預託するためで、勝ち数が増えるのも当然といえる。この傾向は、最近ますます強くなってきている。
成績のよくない厩舎には、馬主も馬を預託したがらない。預託する馬が勝って、あるいは勝てないまでも入着して、賞金を得たいためだ。馬主としては、当然のことだ。調教師の側としては、馬主の期待に応える手腕を問われることになる。
今年2月には佐藤征助元調教師が、定年まで3年を残して実質的な廃業に追い込まれている。かつては定年まで安泰だった調教師の世界にも、厳しい風が吹き始めている。リーゲィングの上下の格差はますます開く傾向にあり、成績不振の調教師にとっては、まさに冬の時代が近づいているといえそうだ。 (
新倉 弘人) |