マイケル・ムーアの「華氏911」を見る(8月10日・日本記者クラブ)。普段の試写会であれば所属と名前を署名すればよいのだが、今回は申し込みの名前を照合した上リボンを渡されて入場する。10階の会場は300人を越す盛況であった。山田洋次監督の「たそがれ清兵衛」以来である。辛らつなブッシュ政権批判のドキュメンタリー映画と聞いていたが、私にはそれほどひどいとは感じなかった。
9・11のさい、ブッシュはフロリダの小学校を視察中であった。補佐官がブッシュに事件を耳打ちする。だが、ブッシュは動かず、童話を朗読する。映画はブッシュは茫然として何も出来なかったといいたいのであろう。あわててその場をさるのがいいのか。それとも一応その場を繕って何気なく出てゆくのがいいのかなんともいえない。あなたならどうするか。大統領に就任してから9・11までの8ヶ月42
パーセントが休暇であったという。仕事のできる男ならやるべき時にやればよいと思う。テロ前夜ブッシュは「フランス製の高級シーツ」で寝ていたという。それがどうし
たといいたくなる。
イラクで戦死した息子は家にあてた最後の手紙に「あのバカを落選させたい」としるす。また、イラクに戻るよう命じられたら刑務所に行く方を選ぶという兵士がいた。こういった場面を見ると、つくずくとアメリカは表現の自由の国だと痛感する。議員の中で息子をイラクに出征させているのは一人しかいない。ムーア監督は連邦議会の前で議員達に息子をイラクへ送るように提案するが、みんな逃げてゆくだ
けである。
ミシガン州フリントでの海兵隊の新兵募集風景は面白い。この地区の失業率は10パーセントをこえる。ムーア監督は言う。「小さな記事や些細な問題のなかにこそ巨大な真実が隠されている」。逃げ行く議員の姿に、新兵募集風景に私たちは真実を嗅ぎ取らねばならないのだろうか。
この映画はアメリカでも大変な人気だという。「華氏911は自由が燃え尽きる温度」というが果たして11月の大統領選に影響を与えるのであろうか。それでも私はブッシュが再選
に賭ける。 |