2003年(平成15年)6月10日号

No.218

銀座一丁目新聞

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競馬徒然草(17)

−早くも夏競馬へ− 

 今年の第70回ダービーは、やはり競馬の祭典らしい盛り上がりを見せた。数々の記録も打ち立てた。優勝したのは関西のネオユニヴァース(瀬戸口厩舎、デムーロ騎乗)で、6年振りの2冠馬誕生。秋は菊花賞(10月26日、京都)で3冠に挑戦することになる。これで今年になって5連勝。無敵の感がある。菊花賞にも勝って、9年振りの3冠馬誕生(史上6頭目)も夢ではない。2着には関東のゼンノロブロイ(藤沢和厩舎、横山典騎乗)が食い込み、西高東低といわれる形勢の中での健闘が光った。この馬については、前走の青葉賞を勝った時点で、レース振りのよさと勝ちタイムの優秀さを、本欄でも取り上げておいた。ご記憶の人もいるだろう。今後も記憶に留めてよい馬である。
 競馬には、それぞれの馬に何らかの物語といっていいものがある。とりわけダービーはそうである。例えばマイネルソロモン。祖父(シンボリルドルフ)も父(トウカイテイオー)もダービーを制覇している。もしマイネルソロモンが勝てば、ダービー3代制覇という画期的なことになる。そこで、この馬に夢を賭けた人もいる。体が弱かったためデビューが遅かったが、3連勝してダービーに間に合った。そんな事情があったから、夢を託した穴ファンがいてもおかしくない。だが、結果は18着に終わり、ダービー3代制覇の偉業は成らなかった。もっとも、そのようにご都合よくいかないのが競馬、特にダービーである。
 さて、今年のダービーの記録ということでは、社台の生産馬の大活躍を挙げなければならない。1着から5着までを、社台・吉田3兄弟の牧場生産馬が占めた。これは驚くべきことだ。しかも、その5頭すべてが、サンデーサイレンス(昨年死亡)の遺児と孫だった。サンデーサイレンスの種牡馬としての偉大さを、改めて感じさせる。その産駒も、今の3歳馬の後は、今年の夏にデビュ−する馬たちで最後となる。それを考えると、今年の大活躍には格別の感慨もある。
 その最後のデビューとなる2歳馬たちの活躍は、どんなものだろうか。そんな関心が、早くも湧いてくる。2歳馬の話題など早過ぎると思う人もいるかもしれないが、必ずしもそうではない。ダービーを頂点とした春競馬は6月15日に閉幕し、翌週の6月21日から、いわゆる夏競馬に入る。話題の中心は、2歳馬がデビュ−することだ。早くも、来年のダービー馬探しに熱を入れるファンも少なくない。夏競馬は、北海道の函館、札幌でも行われ、ローカル色豊かな競馬が親しまれている。不景気が続く閉塞状況の世の中だからこそ、人は夏競馬に季節の解放感も求めるようでもある。

(戸明 英一)

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