2002年(平成14年)1月20日号

No.168

銀座一丁目新聞

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茶説

なんとしても金融恐慌を避けよ

牧念人 悠々

 日刊ゲンダイはなかなか面白い新聞である。政府、大新聞、TVをくそみそけなす論評をする。この日の一面の見出しもあいかわらずであったが、こんな記事が目に付いた。ニューヨーク連銀総裁だったP・ポルガーさんやムーディーズの日本担当バイアンさんが『日本が置かれた現状はこれまでの教科書にない。どうしたらよいのかわからない』と言ったというのである(1月11日、「日刊ゲンダイ」より)。
 当たり前である。経済は生き物である。千変万化する。これと言う形はない。別にアメリカの識者に日本の経済の処方箋を教えてもらわなくてよい。日本には「温故知新」という言葉がある。過去の出来事を仔細に検証すれば、そこから新しい創造的な解決策がみつかる。すでに日本は「あらゆる既存の大胆な見直しを含めて政治のリーダーシップの下に官民双方が抜本的な構造改革に取り組むことが不可欠であり、それなしには日本の再生はありえない」(平成11年2月26日、「日本経済再生への戦略」より)として諸政策がすすめられている。とはいっても言うはやすく、実行は難しく、成果は簡単にあがらない。しかも、小泉内閣は苦戦をしいられている。前途は楽観できない。経済指標を10年前と比較すると、庶民は落ちこまざるをえない。
 倒産2万件(1991年、1万723件)、失業率5.5l(2.1l)成長率マイナス2l(3.1l)国債発行残高451兆円(171兆円)地方の借金を含めると693兆円となる。
 私の頭の中には、金融システムの崩壊だけは避けてほしいという思いがある。 大蔵大臣の失言がきっかけで始まった「昭和金融恐慌」では取り付け騒ぎが起き、32の銀行が休業した。130兆円の不良債権を抱える現在、金融庁は債務超過の金融機関の整理を進めている。すでに、24の金融機関がその対象となった。4月のペイオフ解禁までにできるだけ金融機関を健全なものにし、取り付け騒ぎを防ぐためである。今後も破端処理される金融機関が出るであろう。
 昭和恐慌では政府(若槻礼次郎内閣)が大手の台湾銀行の救済に失敗して総辞職、恐慌が益々広がっている。この愚を二度と繰り返してはならない。公的資金の投入はもとより、国有化も考えて断固たる処理をすべきである。不良債権の処理は最優先課題である。
昭和恐慌は関東大震災(大正12年9月)で日本経済が大打撃を受けたことが直接の原因である。損害は鉄道、道路、電信、電話、港、橋梁などの破壊、焼失をあわせると、当時の金額にして数十億円に達したといわれる。その上、不況であった。技術未熟な日本製品は海外では売れず、さらには関税障壁のため締め出された。経済構造自体、脆弱でもあった。賃金切り下げ、不払い、失業者の急増などで社会不安が起きた。昭和元年末になっても発行した震災手形が半分近く未決済の有様であった。
 バブル期、日本が失った資産は1300兆円という試算があるから、関東震災の比でないかもしれない。しかし、物的損害を蒙ったわけではない。本来、2lの潜在成長力を持っており、昔とちがって、経済構造はそれほどやわではない。昭和4年10月に始まったアメリカの恐慌が日本の経済に二重の打撃を与えたが、今年になってアメリカの景気が急速に回復の兆しを見せているので、日本には良い影響を与えるかもしれない。いずれにしても、政治、経済の構造改革を実行して早く日本を再生してほしい。

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