2001年(平成13年)10月20日号

No.157

銀座一丁目新聞

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茶説

同時多発テロを対岸視するな

牧念人 悠々

 今回の同時多発テロをテロとも戦争ともいいがたい。実態はテログループによる反米ゲリラ戦である。犠牲者の国籍は80カ国、死者、行方不明、6962人を数える。仕掛けた主権国家はない。テロにしては規模が大きすぎる。あきらかに、自由な国際社会への挑戦である。それ故に全世界がまきこまれた。ブッシュ大統領は「われわれ側につくか、テロ側につくかどちらかである」と演説した。(毎日新聞世論調査「戦争」宣言支持52%)これまでの戦争の概念を変えた新しい形の戦争と認識すべきであろう。二年前中国で出版された「超限戦」(空軍出身ら二人の共著)には、古典的な国家対国家ではなく、ゲリラグループ対国家の戦争が起きるようになると、指摘している。
 日本は、日本人はどう対応すればよいのか。新しい戦争に対する認識の違いでその対応はことなる。また、その人の主義、信条によってちがってくる。しかし、アメリカで24人の日本人がゲリラの犠牲になった事実を忘れてはいけない。けして対岸視するこはできない。人ごとではない。この戦争はどこでも、どのような形でも起こりうるのである。日本でも起きる可能性がある。また、旅先で乗った飛行機がハイジャクされて、そのまま、軍事施設なり、高層ビルに突っ込む事態になるかもしれない。常に最悪の事態を考えて対処しなければいけないところにきている。
 見えない敵に対して、アメリカに追随するというのではなく、ともに自由社会を守るために戦うのである。日本も応分の責任をはたさなければならない。
 戦争支援に各国で濃淡があっても仕方が無い。各国独自色をだせばよい。日本はなんでもできるというわけにはゆかない。憲法の枠内でしか行動はとれない。9条にいう。

 「国際紛争を解決する手段としては、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は永久に放棄する」
 つまり、報復に武力を使う事はいけないと定められている。現行解釈の中で出来るだけのことをするほかない。さきに小泉首相が出した具体的なテロ対応策は一応評価する。(同調査対米協力表明支持63%)これは、無原則に自衛隊の海外派遣を認めるわけではない。さらに、テロ組織撲滅のために政治的に、経済的に国際的に連携してやるべき施策もすくなくない。
 時代は激動する。今回の事件は、国際法の概念をはるかにこえる。しかも目前に危機が迫っている。緊急に対応するほかあるまい。読者のひとりは「アメリカは今回のテロ事件で単独行動主義の終焉を自覚したのではないかと思う」と感想をよせた。思わぬ新しい事態に、「力の論理」を推進するブッシュ大統領も国際社会の協力を求めざるをえなくなった。そうでなければ、テロ組織の撲滅は期待できない。
 われわれもまた「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼してわれらの安全と生存を保持しようと決意した」「いずれの国家も、自国のことのみ専念して他国を無視してはならない」と憲法前文に宣言したように、あくまでも国際協調主義をとりたい。専制と隷従、圧迫と偏狭をなくそうと努めている国際社会と同一歩調をとるのは当然である。これからも、この原則と平和主義にのとって何ができ、何が出来ないのか考えてみるべきだと思う。

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