2001年(平成13年)8月1日号

No.151

銀座一丁目新聞

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追悼録(66)

 またも考えられない事故がおきた。花火見物の夜、誰が歩道橋の上で、100人を超える死傷者が出ると予想できたであろうか。だが、よくよく現場を検討してみると、起こるべくしておきたといえる。
 新聞の報道をまとめると、なんといっても雑踏整理がずさんであった。15万人も集るのに、歩道橋には歩行者を整理し、流れをつくるためのロープも張ってなかった。雑踏の流れを作るためにロープを張る事は原則である。混雑すれば入場制限もしなければいけない。それを怠っている。朝のラッシュ時を見るがいい。改札からホームへの階段は左側通行、あるいは右側通行と決められているのに、守らない人が意外に多い。交通道徳を無視する連中がいるのである。
 次ぎに関係者が事前に現場をよくみていない。朝霧駅−歩道橋−大蔵海岸の人の流れ、集まりを考えて対処すべきであった。単に人を配置すればよいというものではない。歩道橋周辺に40人、大蔵海岸にガードマン156人、市職員87人を配置したというが、無駄であったというほかない。交通整理は警備会社にませればよいと言う安易な考えも汲み取れる。全体の責任は市当局と警察にある。現場をよく歩けば、危ない個所がみえてくる。たとえば、人の流れを狭くする場所。今回でいえば、歩道橋である。とりわけ、帰りのお客をスムースに安全に駅まで誘導する方法を考慮したとは思えない。歩道橋で危険を感じて北側にある交番に訴えた客がいたそうだが、その時では、遅すぎる。昨年末、大蔵海岸で行われたイベントでは人出が5万人だったのに、歩道橋は3000人であふれ、付近の人が将棋倒しの危険性を指摘していたという。また、現場で「押す人は明石の君に嫌われます」とスピーカーで注意するくらいのユーモアがあってもよかった。そうすれば、現場の雰囲気もぐっと柔らかくなったはずである。どおみても、雑踏整理の専門家がいたとは思えない。
 次ぎに指摘されるのが危機管理能力の欠如。雑踏整理の失敗はすべてここからくる。少なくともこれまでの雑踏事故の事例に目を通す慎重さがほしい。群集のあるところに混乱ありと思わなければいけない。15万人を一度に捌くことは難しい。流れに任すにしても、人為的な流れを作るのが鉄則であろう。事故を起きた事を想定した対策を全くたてていないのはどうしてか。
 事態を甘く見たというほかない。この事故で子供が8人、老人が2人が犠牲になった(8月21日夜、明石市)。市当局の思わぬ不手際が弱者を直撃したのはなんとも痛ましい。

(柳 路夫)

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