女性と新聞のかかわり方について書く。古い話をして恐縮だが、平成6年5月末、オーストリア・ウィーンで開かれた「国際新聞発行者協会総会」でスポニチの社長として20分間講演をしたことがある。この講演の結論は「女性を味方にし、その力を生かす新聞は必ず伸びる」というものであった。この考えはいまも変らない。
社長就任(昭和63年12月)以来、積極的な女性記者の採用、女性100人の友の会(スポニチマドンナ100)の結成、育児休業期間を3年とする規定の改定(平成6年4月実施)紙面への女性ライターの起用などの諸政策を実施に移した。その結果部数が大幅に伸びた。時代が後押ししてくれた面もある。
平成6年6月、会長になってから、社長にまかせて一切口だしはしなかった。
スポニチの本年度の採用は男ばかり9人である。私の時は役員面接の段階では男女の区別をつけず、A 評価の多い方から順位をつけた。またできるだけ一芸を持っているものを取るようにした。だから、毎年数名の女性記者が入ってきた。私のような採用方針なら、今年も少なくとも1人ぐらい女性記者が入社したであろう。編集局では女性記者で辞めるものが少なくないので、毛嫌いしているむきもあるのはよくわかるが、女性記者の目、感性を必要とする出来事、事象が多いことを幹部は知らなければならない。
「マドンナ100」はお金がかかりすぎるというので、廃止された。マドンナ一期生がいった言葉を忘れることはできない。「今女性の一番トレンドな朝の過ごし方はコーヒーを飲みながらスポニチを読むことよ」今やこの言葉は幻と消えた。
育児休業期間が3年になっても、スポニチの場合、これまでに育児のために休んだのが1年が最高と聞く。まだ十分活用されていないようだ。伊勢丹は1971年から3年だし、旭化成は今年から4年になった。法律は最大1年である。これから女性の力を認め、活用しようとする企業は育児休業を伸ばすことであろう。
もちろん、社会人としての感覚がにぶくなるとか、復職の場合なかなか職場の雰囲気になじめないといった難点があっても、今後の少子化の傾向を考えると、企業は女性の活力の生かし方を真剣に検討せざるをえまい。
これからの時代はますます「女性が居心地がよく、働きやすい企業は必ず伸びる」と断言してもよい。
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