花ある風景(47)
並木 徹
昭和女子大学から「女性文化十九集」が贈られてきた。ここに同大学の女性教養講座で話した私の講演が載っている。平成11年10月のことで、人見講堂で千余名の女子学生を前に話をした。1時間半の講演中、私語は一つも聞かれなかった。メモをとっている学生も少なからずいたのには驚いた。
人の話は良く聞くもので、共感したところ、大切だと感じたところをメモする。疑問を抱いたところは、質問したり、あとで調べたりするようにする。この癖をつけていると、物事が良く理解でき、自分の頭を整理することができるようになる。
この日の講演のテーマは「新聞機能について」であった。はじめに戦前よく聞かされた「よく学び、よく遊び」を私の身に則して語った。ここで私は「七・三の原則」を説いている。遊びを七にして、学ぶを三にしなさいと言った。常識では五対五であろう。私は怠け者だから遊ぶ方が楽しいので七にしたまでである。この方が実行しやすいと思う。勉強すきな人は学ぶを七にすればいい。
毎日新聞に入社した時、先輩から「名文を書きたければ、貯金するな、大いに遊べ」と教えられた。遊びとはマージャン、競馬、花札から映画、演劇、コンサート、美術展にゆくことも含まれる(当然女遊びもはいるのだが、学生を前にして遠慮した)。遊びの中から人生の知恵、話題の豊富さ、取材の駆け引きなどを自然と身につける。文章もおのずとうまくなると言うのである。この教えを忠実に守ったおかげで、お金は使うものと心得、ついに貯金は出来なかった。
学ぶは一週間一冊の読書を実行したぐらいである。今でも守っている。ひとつのテーマを徹底的に追求することはなかった。社会部記者らしく、広く、浅くで終わってしまった。「よく学び、よく遊び」。この平凡なことをあたりまえのようにできれば、それなりの、ひとかどの人物になれると思う。
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