二千年が、初めの一歩を踏み出そうとしています。ずいぶんと尊厳な節目に出くわしたものだな、とつくずく思います。
しかし、あと十日もすれば、2001年は何気なく訪れていて、時はさらさらと、いつもの生活の谷間を流れていくのでしょう。
-------- 横浜港から響く除夜の汽笛の音にぼんやり包まれた部屋の中で、新しい春を迎えます。ピピッと携帯電話の呼び出し音が鳴り、画面の端に四角い封筒のマークが点灯します。メールが1通。
「あけましておめでとう」
「うん、あけましておめでとう」
「21世紀ですね」
「うん、21世紀ですね」
「いいことたくさんありますように」
「うん、ありますように」
「今どうしてました?」
「ぼけーっと。今どうしてますか?」
「メールしてます」
・・・コンカイノジンセイ、シアワセナ、ジダイ。
「こういう感じ、前にもありました」
「いつ?」
「遠い昔」
長保三年、それは1001年のこと。
-------- 宵の深い刻、部屋の中は雪の光でぼうと白い。火箸で灰をかいては、手紙を繰り返し眺めていました。真白い紙に歌が一つ。その時、あちこちの寺で除夜の鐘がゴーンゴーンと。私は文机に向かい、硯の墨に筆をつけました。
「うれしいもの。あなたの筆跡。急いで書いた感じも、またいとうれし。楽しいもの。あなたの歌。じーーんとくる感じも、またまたいと楽し。今頃、あなたはどうしてるのかしらん。この手紙がピピッと今すぐあなたの元へ届けばいいのに。あぁ、ちょっとしたもどかしさも、これまたいとをかし。」(「枕夢子」より)
「覚えていますか?」
「覚えているような、いないような」
「3001年にはちゃんと思い出してくださいね」
「・・・・」
「夕ご飯、何食べた?」
ひとまず、今日の話をしましょうか。それから、明日のことも少し。
2001年も、新世紀も、新千年も、きっときっといとあはれ。良い日も悪い日も、ぜんぶ一緒に「ああ、はれ」!
|