八日は成人の日。国の祝日のひとつとして昭和23年7月20日、設けられた。
成人の日とは二十歳になった子供に選挙権、喫煙権、飲酒権などの諸権利を付与することを祝う日と、「天使の辞典」(トラ・アンジェリコ=訳編)にある。
自分のことに照らすと、終戦の年の8月、呆然自失のうちに20歳をむかえた。しかし「歩兵」の本領は前進あるのみである。陸士の兵科は歩兵であった。本科のあった神奈川・座間、富士の野営地で決戦間じかにして鍛えに鍛えられた。歩兵操典にも「前進前進また前進」と教えている。この心構えが良かったように思う。選挙に関しては不真面目であった。昭和23年4月20日に第一回参議院選挙が行われているが、棄権している。その後も、仕事がいそがしいせか、あまり投票所にはいっていない。
喫煙は毎日新聞の社会部デスクになった昭和40年8月からはじめた。年齢は40歳だった。タバコの量が次第に多くなり、一日ピース20本入りを6箱も吸うようになった。昭和59年秋、朝起きた時、あまりにもノドがいがらっぽかったので、禁煙した。タバコの効用は組合との団交の際、間をとるのに役だったこと、また長い原稿を書くとき、よい考えが不思議とうかんだ事である。喫煙権を行使したのは19年間である。
飲酒は体質的にのめないので、好きではない。昭和41年、サンデー毎日のデスク時代、同42年、社会部デスク時代、同43年、メキシコ・オリンピックの特派員の時、たて続けに3回も追突事故にあった。それ以来、酒を飲むと、夜中偏頭痛がするので、酒をやめた。禁酒したというより体が受け付けないのである。
こうみると、諸権利をあまり行使していない。昨今は心を入れ替えて総選挙の際には投票するよう心掛けている。
日本民俗辞典(大塚民俗学会編)によると、津軽地方では昔は男子が17、8歳になると、岩木山詣りを、帰りに遊郭によって性的体験をすることになっていたとしるされている。
私の場合、22歳の時だが、今の若者は男女とも20歳前に経験している者が少なくないらしい。性的経験は一概に非難すべきものではない。男女の駆け引きは一つの勝負である。囲碁、将棋、マージャンなどではえられない人生の機微を知ることができる。
いまの青年が不幸だと思うのは団体訓練を受ける機会が少ない事である。戦前は旧制高校の全寮生活。軍隊での体験などがあった。教育改革国民会議が小、中、高生徒の共同生活と奉仕活動を義務づけることを提案したが、早急に実現される事を望みたい。
若者は自由と言えば、勝手気まま、自由放任と思い込んだいる。自由の裏に義務、責任、規律などがあることを知らない。共同生活と奉仕活動はそのことをはっきりと教えてくれるだろう。
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