2000年(平成12年)10月20日号

No.123

銀座一丁目新聞

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追悼録(38)

 インドネシアの独立のために、その国の青年たちと共に戦った日本兵を描いた藤 由紀夫監督、映画「ムルデカ」(独立)が来年5月公開される。すでにインドネシアでの撮影を終え、いま仕上げを急いでいる。
 大東亞戦争で日本がインドネシアをオランダから解放、軍政下で独立への歩みを進めているうち、日本の敗戦となった。多くの日本兵が独立軍に参加した。
 この映画に津川 雅彦さんが扮するジャワ派遣軍司令官、今村 均大将(陸士19期)がでてくる。今村さんは名将である。その人格を物語るエピソードは数多くある。聖書と歎異抄が座右の書であった。
 後に第八方面軍司令官となったので、戦後今村さんはラバウルでの豪州軍の戦争裁判で10年の刑を受けた。一方、オランダによる戦争裁判では証言台に立ったすべてのオランダ人が今村さんの民主的軍政を誉めたたえたため無罪となった。
 今村さんは豪州軍の命令で巣鴨刑務所で服役する。だが、ラバウルの近くのマヌス島の刑務所にいる部下戦犯たちの身の上が心配でたまらず、マヌス島行きの嘆願書を三回も占領軍に提出する。念願かない、戦争が終わってすでに五年も経つ25年2月マヌス島にもどる。年はすでに65歳であつた。誰もができることではない。マッカーサー元帥が「日本にきて以来はじめて真の武士道に触れた思いだった」と語ったのは当然とはいえ、感動させられる。
 今村さんは1968年(昭和43年)82歳で亡くなった。
部下たちの今村大将によせる熱い思いを知って角田 房子さんは「責任−ラバウルの将軍 今村 均」の名書を新潮社から出している。

(柳 路夫)

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