2000年(平成12年)10月20日号

No.123

銀座一丁目新聞

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花ある風景(38)

 並木 徹

 金 大中さん、ノーベル平和賞の受賞おめでとう。心から祝福したい。大統領に就任して以来、期待していただけに嬉しい。このニュースを東京・神田神保町の岩波ホールで聞いた。10月13日は、楽日を迎えたドキュメンタリー映画「伝説の舞姫 崔承喜」の打ち上げ中であった。朝鮮出身の舞姫を描いたこの映画があと一週間も上映されれば、もっと観客動員が出来たであろうと話題となった。
 人間を鍛えるものに、貧乏、大病、牢獄の三つがある。これを克服するのに信念、理想を持ち、気力と努力を必要とするからである。金 大中さんをみていると、あらためてそのことを痛感する。拉致・監禁事件(73年)死刑判決、投獄(80年)がいかに金 大中さんを大きく育てたかわかる。不屈の精神の持ち主のようで、国会議員を四回目で当選、大統領選も四回目で勝利した。普通の人であれば、諦めるところを粘り抜くところにその真骨頂がある。
 太陽政策を掲げ、北朝鮮との和解、共存の政策を進めた。多少の不協和音がでても貫き、今年の6月、南北主脳会議を実現させた。
 もちろん、批判者もかなりいる。朝日新聞によれば(10月14日)、民主化闘争をともに闘ってきた金 泳三・前大統領は「何が自由と正義、人権だ。独裁者がノーベル賞とはまったく矛盾している」と声を荒げたという。
 このような批判があってもいい。人の評価は死んでからきまる。ともかく、信念を曲げず、その政策を推進したところに地獄を見た男のしたたかさと強さがある。南北統一までエールを送りたい。

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