そのうちの一冊,井上ひさしが語る昭和史『二つの憲法』大日本帝国憲法と日本国憲法が面白かった。
何が面白かったかというと、イギリスの「オックスフオード英語辞典」(1993年版)の憲法の意味である。「ある国民,国家あるいは政治体がそれに従って組織され統治される基本原理の体系あるいは基本原理の集合。この意味は1689年から1789年の間にしだいにできあがった」とある。
つまりこの百年間には「名誉革命」と「権利章典」(1688,9年)、ジョン・ロックの「国政ニ論」(1690年)アメリカ独立宣言(1776年)「アメリカ成文憲法」成立(1788年)「フランス革命」と「人権宣言」(1789年)などがあった。日本の憲法を見てもわかる.前文にはリンカーンのゲッテイスバーグ演説に見られる「人民の人民による人民のための政治」と言う民主主義政治の基本原則がおりこまれている。またフランスの「人権宣言」にある「すべて権利の保障が確保されず,権力の分立が定められていない社会は,憲法をもつものではない」と言う考え方がとりいれられている。
97条(基本的人権の本質)には人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって,これらの権利は過去幾多の試練に堪え・・・の文言がある。
日本の憲法は敗戦という経験を踏まえた上,この百年の間に形づくられた人類普遍の原理がおりこまれいるのである。
参院憲法調査会の招きで来日した元GHQ外事担当海軍少尉リチャード・プールさん(81)は毎日新聞のインタービューに答えてつぎのように語った(5月3日付)。「策定過程が異常だからといって日本国憲法の現代的な価値と意義はそこなわれない。『押し付け憲法』を理由に別物にすりかえようとしても支持は得られない。今の憲法は日本のために役たってきたと確信している」。