花ある風景(13)
並木 徹
作家の城山三郎さんが小渕首相とのインタービュウ(昨年12月)の中で「政治家には志が必要です。局面,局面の目標ではなく、もすこし凛としたものを。政治家の本懐は志です」といった。
しかし,志が必要なのは何も政治家だけではない。経済人にも求められる。なんと志のない人が多くなったことか。上司におべっかを使い、ひたすら黙従する人間だけがえらくなっているという。
今年の1月鈴木義信さんが東芝メデカル社長に就任したときいてさわやかな風を感じた。同社は関連会社をふくめて従業員2600人,売上高1900億円をあげている。
ソウル五輪野球の監督で銀メダル,東芝監督で49回都市対抗野球で初優勝した実績を持つ。負けず嫌いで、直言居士、さきに目標を設定し、策を実施していく手法とか。「野球も会社も同じ。監督がいくら言ってもその気にならなくてはダメ」(毎日新聞1月29日付より)という。
社員の気持を盛り上げ一つの目標に向かわせるのが経営の要諦でもある。鈴木さんの言うとうりである。だが、それをできる経営者がすくない。日産などはその最たるものであろう。社員にやる気をおこさせる施策もせず、社長が現場主義を取らず、人まかせにする。響きのよい訓示だけしていては社員はうごかない。
社長が行動し、目標にむっかって施策を実行して、その果実を社員に十分あたえなければついてこない。鈴木社長の今後を期待する。恐らくこのような人事を断行する東芝は伸びるであろう。