2000年(平成12年)1月1日・1月10日号

No.95

銀座一丁目新聞

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横浜便り(5)

分須 朗子

 2000年おめでとう!

 ご多分にもれず、「いい年であるように」と願っています。

 記念すべき新しい年を迎えるとき、過ぎた年を思い出します。

 1999年----「今年は本当にいい年でした。」

 景気が悪いだとか、世の中暗いニュースが多いだとか、よく言われていますが、ここで、いいことだけ、思い起こしてみませんか。何気ないけれど忘れられない瞬間、何度も記憶に蘇らせたくなるような楽しい光景、いつもの日常の中にあったはずです。

 それでは、試しに、私の「今年のいいこと」を3つほど。(順不同)

1.1999年5月12日

 「あの日のこと」がこの年も、鮮明に蘇りました。例えば、"一瞬の恋"というものがあったのなら、それは、一瞬にして恋に落ち、一瞬で恋心をかわし、一瞬で恋は完結しているのでしょうか。それとも、一瞬は、答えの出ないまま、永遠に心に棲み続けるのでしょうか。人は、「あの日の想い」のようなものをどんなふうに消化して生きているのだろう。ずいぶん遠くに過ぎ去った「あの時」が、この年もまた「いい瞬間」として鮮やかに存在しています。

2.1999年1月28日

 祖母が亡くなりました。人の死が必然だとすれば、悲しいこととも言いがたい。涙が溢れて心が動いた「いい日」でもあるのです。私は幼い頃から、祖母と枕を並べて寝ていました。口喧嘩が絶えませんでした。病院のベッドの上で赤ん坊に還った小さな身体。金魚のようにパクパクと呼吸を繰り返す唇に紅をつけてあげました。"綺麗だよ"という言葉にだけわずかに反応するのです。たいへんにお洒落好きな女性でした。気が強くてわがままで、私は日頃から疎んでいました。自分を見ているようでした。

3.1999年12月12日

 或る人が電話で歌を聴かせてくれました。受話器の向こうで、お気に入りのCDを流してくれました。たわいもない出来事です。何気なくさらりと過ぎて行ったほんの4分。なぜだろう、その時の空気の流れのようなものが強く心に刻まれて離れません。冬の朝、静けさの中で凍てつきそうだった心に温かく染みわたってきました。この先、忘れたくないと願う「優しい時」。

 小さな出来事、大きな出来事・・・あの日の微かな「心動」が、じわりじわりと人生を動かしているような気がします。

 2000年も、たくさんの「いいこと」作りましょう。



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