1999年(平成11年)8月20日号

No.82

銀座一丁目新聞

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ゴン太の日記帳 (46)

目黒 ゴン太

 バイト先で見せられた1枚の写真のおかげで、自分は、その日の夕食が、のどに通らなかった。その写真というのは、中東地域での何かの紛争による被害を受けた人々を写したものなのだが、それは、普段、自分が、TVや新聞で見るような生易しいものではない。もっとエグい、グロテスクなものであった。つまり、TVや新聞等には載せられない、又は、必ず施されているであろうものなのだが、それは、写真に撮られたそのままの形でのものであり、被害を受け、亡くなった人が、ありのままにあるものだった。

 まず、こうした無修正の写真を目にして思ったことと言えば、「気持ち悪い」とか「本当に起きたことなのか」とか、疑ってかかってしまったりしたのが、素直な気持であった。そして、少し時間が経ち、考え直してみると、日頃、自分達は、いかに、モザイクとか、修正という技術や、報道倫理に基づき、扱われない情報等に慣れてしまってきていたかを実感させられた。

 メディアで扱われる情報が、「どこか遠いよその国」で起こる戦争や紛争の全てを伝えていると、いつの間にか、勘違いさせられていた。情報の裏には、実際には、今回、自分が見た凄惨な部分が、数多く存在しているのだろう。殺された人々がいると言われれば、そこら一帯の地域の説明や、何が何だか分からない程の修正の入った残像の裏には、死体であったり、血であったり、飛び散った体の部分が転がっていたりするのである。

 凄惨な場面の写真は、できることなら目にしたくない。しかし、平和ボケした日本で、そういう戦争地域の人々の状況を、少しでも、把握しておこうと思うならば、一度や二度は、見ておくべきなのかもしれない。自分が、今回、見たような写真を見れば、報道されたもので作ったイメージと現実とのギャップに気づき、少しは、考え方を改めるであろうから。

 

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