2012年(平成24年)11月10日号

No.555

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安全地帯(375)

信濃 太郎


晩秋鎌倉に遊ぶ


 友人安田新一君の案内で車により鎌倉を散策した(11月2日)。この日は快晴。私にとって鎌倉は小学校唱歌の世界である。『歴史は長し700年 興亡すべて夢に似て 英雄墓はこけむしぬ』(7番)。まず材木座の東照山光明寺へ。ここで目立つのが入母屋造り、銅板葺きの本堂。元禄11年(1698年)の建立。関東大地震でもびくともしなかった建築物である。本堂に入る。本尊は阿弥陀如来。まず無心に南無阿弥陀仏を唱える。『無量寿経』『観無量寿経』『阿弥陀経』を浄土三部経と言う。書棚には『浄土三部経』上・下・岩波文庫」がある。2003年6月に購入したがパラパラと目を通しただけである。いつかは勉強することもあろうと思ったのだがすでに9年もたつ。近世この寺は浄土宗18か所ある学問所寺の筆頭であったという。早速今日より浄土三部経を読み始めよう。

 思い出した。ミュージュシャン槇原敬之の『世界に一つだけの花』。毎日新聞の春の選抜高校野球大会の行進曲にもなった曲である。この歌は『仏説阿弥陀経』の一節がヒントと言われている。この歌のオンリーワン」という主題は、「天上天下唯我独尊」という仏教の教えが念頭にあったといわれ、『仏説阿弥陀経』の「池中蓮華 大如車輪 青色青光、黄色黄光、赤色赤光、白色白光 微妙香潔」という一節が元になっているという。「池中の蓮華,大いさ車輪のごとし。しかも青色には青光、黄色には黄光、赤色には赤光、白色には白光ありて、微妙・香潔、たり」と岩波文庫にある。槇原さんの歌詞にも阿弥陀様の御利益を賜っている。

 「秋深く阿弥陀如来に叱咤さる」悠々

 ついで東勝寺跡と腹きりやぐらを訪ねる。東勝寺は葛西ヶ谷(鎌倉市小町)にある北条氏の菩提寺であった。今や跡形もなく草が茂るばかりの広場になり果てている。ここには石垣があり城のような作りになっていたといわれる。発掘の際には北条氏の家紋である三鱗の入った瓦や中国から渡来した青磁の椀などの破片が見つかっている。元弘3年(1333年)5月22日新田義貞の鎌倉攻めによって屋敷を焼かれた北条高時は東勝寺に一族を集め堂に火をかけて一族郎党がことごとく自害した。『太平記』には自害した人々は283人の北条一族と家臣870人と記されている。これら戦死者の遺体は近くにある『腹切りやぐら』などに葬ったと伝えられる。洞穴には真新しい草花が活けられていた。高時滅亡から679年、歴史を重んじ人を葬う気持ちは厚い。

 「秋深く家紋悲しき東勝寺」悠々
 「花たえぬ腹切りやぐら秋の風」悠々

 昼食はホテルで安田夫人美津子さんを交えてカニ料理を美味しくいただく。午後からは鎌倉国宝館で開かれている『武家の古都・鎌倉』の特別展を拝見した。安田君は道々、蘊蓄を込めて彼なりの「鎌倉学」を披露する。『建長円覚 古寺の 山門高き 松風に 昔の音や こもるらん』(8番)その昔の音を私はわずかに聞いた一日であった。