2010年(平成23年)2月10日号

No.494

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花ある風景(409)

並木 徹

 基本動作を守る大切さ

 
 事故は起こるべくして起きた。多くの事故がそうである。基本動作を守っておりさえすれば事故は未然に防げる。東京都文京区の東京ドームシティアトラクションズで、走行中のコースターから会社員(34)が転落死した事故(1月30日午後)がそうであった。20代の女性アルバイトが安全バーもロックされているか、手で押し込んで確認しておけばなんでもなかった。さらに言えば、「自分を守るのは自分自身である」と言う鉄則が忘れられている。34歳のサラリーマンが自分で安全バーを下して走行中振り落とされないように確認すれば問題はなかったはずである。

 何事も日ごろが大切である。うっかりミスは人間、だれもがおかす。植村花菜が歌う『トイレの神様』はトイレを磨くことによって人間が丁寧にしかもきれに仕事するのを教えている。きれいにトイレ掃除をすれば心も磨かれるのである。仕事もことこまかくやるようになる。それでも人間は惰性で生きる。確認がおろそかになる。昨日はそれで何も起きなかったから今日も大丈夫だろうと「確認」をしなくなる。責任者が係員に口頭で「手で押して確認するように」と指導していてもポカが起きる。今回の場合、その指導もしていなかったようである。

 現場には事故を未然に防ぐ手立てがある。責任者は毎日のように現場を見て歩かねばならない。従業員の仕事ぶり、園内の清掃など場内の雰囲気を知る必要がある。とりわけ安全を求められている遊園地である。細心の注意がいる。お客の命を預かる経営者はともすれば営業成績が上がることを喜んで安全がおろそかになる。その朝鋭敏な経営者なら「今日は何か起こりそうだな」と勘を働かせて安全担当の従業員を呼んで「安全バーの確認をせよ」と指示ぐらいする。

 安全担当の部長はこれまで起きた遊園地の事故の事例を繰り返し読んでおくことが肝要である。事故は当たり前のことをしなかったことによって起きる。その代償は大きい。「安全バーのロックがされていませんよ」と確認さえすれば一人の有為な人の命が救われた。